March 24, 2025

映画「名もなき者」(A COMPLETE UNKNOWN)

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「名もなき者」(A COMPLETE UNKNOWN)を観てきました
最近「ROCKな映画」をよく見に行きますが、ドキュメントものが多く、ほとんどミニシアターでしたが、この作品は久々にシネコンでの上映作品です
(GET BACKはシネコンだったな)

シネコン上映ってことは話題作ってことでもあり、音楽好きに限らず鑑賞する人がいるだろうし、ボブ・ディランを名前と有名曲しか知らないような方(一緒に行ったうちの連れ合いがそう)も、「映画作品」として観たことでしょう
もちろん、私の周りのディラン好きやROCK好きの方もいっぱい観に行ってました

主演のティモシー・シャラメ君は「絶世の美男子」と言われるだけのことがあり、端正な顔立ちですが、演技も大したもので今作では少し薄汚れた感じの若者をうまく演じてました
また、ディランをしっかり研究したであろう、しぐさやしゃべり方、声のくぐもり方など素晴らしく、ウッディ・ガスリーと最初に出会ったときのセリフ一言で「あぁジマーマン(ディランの本名)だ」感心してから、ラストまでディランにしか見えなかった
さらにはギターの演奏や歌も、努力して身に着けて、違和感なく披露してくれました

「FREEWHEELIN」のジャケットでも有名なシルヴィとの出会いと別れ
ジョーン・バエズとのエピソード
様々なアーチストとの出会い
それらによって変化していくディランの心情が響いてきます
実際にはどの程度だったかわかりませんが、映画の物語として成立するような脚色はあるでしょう
だからこそ映画として見入ることができます(コアなファンには不満があるようですが)

秀逸なのは、差別主義やキューバ危機など、当時の世相をニュースで盛り込むことで、そこにカウンターさせるディランの詩の世界が深く意味を持ちます
私がディランを知り、聞き始めたころはもうそれらの時代は変わった後で、「初期のディランの詩」とひとくくりでしたが、その時その時の歴史を味わえたのはうれしいことです

物語はクライマックスのフォークフェスに向かって進んでいきます
同じような映画の草分けである「ボヘミアン・ラプソディ」では感動的なライブで盛り上がりますが、この作品のライブはカオスなものとなります
伝説として知っていた「ユダ!(裏切者)」の罵声、「ライアー(お前はうそつきだ)」と返すディラン、を目にすることができるとは
(実際はこのフェスとは違うライブでのやり取りだったと思うけど)

そういう背景も含め、「Like A Rolling Stone」の演奏は鬼気迫るものがあり、思わず目頭が熱くなりました
なんども問いかける How does it feel

With no direction home
Like a complete unknown
と問いかける

ディランを追ったドキュメントも、この作品も、この一説からタイトルがとられているほど象徴的な問いかけ


あと、「ハルク」や「ファイトクラブ」でも楽しませてもらったエドワード・ノートンが渋くて素晴らしかった

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March 11, 2025

映画「ヒプノシス レコードジャケットの美学」

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洋楽のレコードで最初に買いだしたのはBEATLESだけど、次にはまったのがPinkFloyd
この音楽ブログでも第1回目が「LET IT BE」
第2回目が「狂気」だったりする
(20年以上前に始めてたのか…)

で、そんなPink Floydと関係が深いのが「ヒプノシス」で、それは個人ではなくてユニットだというのは知っていたし、実際彼らの作品は何枚も持っている
今回、映画になったので観に行った次第
関わりのあった方々のインタビューで構成されてるけど、Pink FloydメンバーもZeppelinメンバーも、ここ数年でさらにお歳を召されたようで…おじいちゃんばかりがしゃべってる映画
各アルバムジャケットのエピソードはどれも興味深く、音楽でこだわりを見せたアーチストに負けず劣らずのこだわりぶり
そのぶっ飛んだアイディアと、それを受け入れるぶっ飛んだアーチストが居たから出来上がった芸術のあれこれだと再認識
売り手のレコード会社だけが、常識的な判断で反対するけど、それを押し通せたからあれらの作品があるんだな
面白いのは、そんなヒプノシスに対し、ポール・マッカートニーだけは最初から自分でアイディア持ってて、それを実現させるために彼らの技術を利用したという…やはりあらゆる面で非凡な人だ
あと、「聖なる館」のジャケットは、最初は子どもらにスプレーペイントしてあの岩場に置いて撮影するつもりだったというエピソード
雨のために断念したため、モノクロでペイントなしで撮影して後で着色したという
もし、ペイントして撮影してたら、虐待で発禁、さらには彼らが大人になってから訴訟されてかもね
しかし、作品中のシド・バレットのエピソードにしろ、最期は仲たがいした二人のことを、今生きてるポーが語る場面にしろ、そこに「Wish You Were Here」が流れるのは反則過ぎ

LP世代にとっては、やはり30cm四方のサイズは魅力的で、ジャケットはほんとにアートだった
表と裏で物語になっていたり、中には見開きになっていたり(表面だけでは完成せず、広げて初めて作品になる)
有名な「狂気」のジャケットは、プリズムと虹の表から、虹が鼓動になっている内ジャケットを経て、表とは逆向きのプリズムが虹を白い光に収束させて表につながるという無限ループに仕上がっている
Zeppelinの実質ラストアルバム「In Through the Out Door」などはLPが茶封筒のような袋に封入されていて、どんな写真か見えない
で、実は登場人物の視点ごとに6種類あって、どれが当たるかわからないというものだった

レコードを買いに行くと、一枚一枚引き上げながらジャケットを見てほしいレコードを探すというものだったから、お目当てのもの以外のアルバムアートを見ることもできたし、なんなら「ジャケ買い」などという、アート先行の買い方もあったりした

今の子どもらは、そんなLPジャケットの魅力は伝わらないだろうし、CDなだけでも小さくて価値が下がるのに、いまやアプリに表示されるだけのアイコンとなってしまった

今回、封切りの初日(平日昼間)に行ったので、そこそこ観客はいたが、ほぼ私と同じ年代(笑)
ヒプノシスと聞いて惹かれるのは、アートだったレコードジャケットを知っている人だけかな

余談として、作中に流れたZeppelinのライブ映像は素晴らしかった
大スクリーンで観るジミーやロバートは圧巻だ
今、劇場で「永遠の詩」やったらすばらしいだろうな
できれば爆音上映+声援ありで

 

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June 02, 2024

映画『シド・バレット 独りぼっちの狂気』

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以前、エリッククラプトンのライブ映画を観に行ったミニシアターで予告編を観てからずっと気になってた映画「
シド・バレット 独りぼっちの狂気」が上映されたので観に行った
当日朝チケット予約をしたときは、平日のこともあって私一人独占状態
映画館につくとほかにも奇特な方がおられたようで、7・8名の観客が
(まぁ、私と同じ年代な感じ)

映画が始まり、俳優を使ったイメージパートをブリッジに、彼の生い立ちに合わせて関係者の証言が続いていく
気になったのは、そのイメージパート
BGMが「Shine on you crazy diamond」なのだ
もちろん、PinkFloydから入った私はこの曲の意味は知っている
しかし、Pink Floydに頼りすぎだという偏向イメージをもたせるものだ
思えば映画の和訳タイトルも「一人ぼっちの狂気」としている
原題は「Have You Got It Yet?」であり、狂気のかけらも何もない

そう「狂気」はPink Floydの代名詞だ
(まぁ、アルバム「狂気」も原題のかなり無理やりな意訳になっているが)
しかし「Shine on」も「狂気」も音楽としてはシドは関わっていない
シドの半生を探るのには最初期のPink Floydは良いとしても、ヒット作にあやかるのは…

と、相変わらずのへそ曲がりぶりを感じながら映画を観ていく
学生時代のエピソードから、バンド初期の創作活動
ライブの様子などを貴重な動画で観ていると、彼の才能にしびれてくる
こんな感覚に浸れるならドラッグ文化も捨てたものじゃないとさえ感じる
(60年代に英国で育っていたら私も染まっていたかもしれないとさえ思える)

絶頂期から混迷期へ
そして破綻
やはりドラッグはダメだ、触れないでよかったと思える

残されたメンバーや知人たちが振り返る姿
もちろん、今になっての美化はあるだろうが、なんとかソロアルバムを完成させようとする仲間たちの姿や、ヒット作のあとにあえて自己の内面をつらつらとつづるロジャー。ウォータースの姿
ここでやっと「Shine on you crazy diamond」が活きてくる

ある意味、このインタビューまでこの曲を封印していたら、さらに劇的にこの曲が作られた「その時」を衝撃的に味わえたかもしれない
すでにそのストーリーは様々な文献で知っていたにせよ、シドの歴史をなぞったうえでのロジャーの想いに触れることは涙なしに居られない

シドが居たからこそのPink Floydだということを改めて感じる

それにしても、パパラッチはなんて残酷なんだ

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April 04, 2023

映画「MOONAGE DAYDREAM」

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映画「MOONAGE DAYDREAM」を観てきた

David Bowieのドキュメントということで、彼の人生を振り返るものかなぁ、と
しかし観終わった阿智の感覚は不思議なものだった
おそらく、彼のことを知らずに、彼を知りたいと思って映画館に足を運んだ人(そんな人がいるかどうか疑問だが)がいれば戸惑ったことだろう
「ボヘミアン・ラプソディ」でのフレディや「ロケットマン」のエルトン・ジョンなら映画によって人生・半生を知ることができただろう
しかし、この映画は事前に彼のアウトラインを知らなければ困惑すると思う
そう、この映画中に何度も取り上げられる「スペースボーイ」のキーフレーズは「カオス=混沌」だ
基本的に時代順に話は進むが、使われる曲や映像は時代関係なしに行き来する

ボウイ様の人生をなぞる物語…ではない
ボウイ様のメッセージを伝える物語…でもない
ボウイ教の信者にただただ与える福音…でもない

そこにあるのはボウイ様の残した言葉(あとはインタビュアーの言葉だけ)
そそいて作品の中で紡がれた言葉
映像は古いものも新しいものも「サイケデリック」にコラージュされていく

おそらく、観たそれぞれの人が「私の中のボウイ様」と出会うための材料としての映画…なのだろう

なので私個人の出会いとリンクさせると…

まずは「Space Oddity」が取り上げられる
もちろん初期の代表作だ
同時にここでつづられた「トム少佐」という存在の扱われ方がボウイの長い音楽人生でキーワードになる
これはのちのトム少佐の行方を知る私としては、「インナースペース」の叫びに聞こえる

「 Ziggy Stardust」期の映像は、このアルバムが最高傑作だと思う私には最高のプレゼントとなる
虚構のヒーローでありながら、インタビューでは”素”の姿も見せる
スターマンと人間との混沌

「ベルリンb三部作」の時代は、私が彼を知ったきっかけの「HEROS」時期の姿で、日本びいきの様子と相まって私自身の青春時代にトリップさせてくれる
若き日のエイドリアン・ブリューの姿はファンにはボーナストラックのようなものだ

そして80年代、ビッグヒット連発の時代
彼自身それを肯定しようとしているが、常に時代を追い越している彼には「時代の中心」のいることに違和感がある
言葉や表情の裏にそれが感じられる
それに反発した「ティン・マシーン」時代はスルーされて(苦笑)再び時代を追い越す
残念ながら、その当時は私は彼についていけなかった
今になってその時代の音を聞いてはまりだしたくらいだ

虚構の中で「死にたい」と言っていた彼が、「生きたい」というメッセージを残しているのには気づかなかった

映画のつくりとしては、コラージュ的な映像のつくり方が彼をうまく表現している
そして特筆すべきはそのBGMの使い方
彼の歌を配しているのは当然だが、それ以外の部分のBGMには彼の曲の「サウンドトラック」を使用している
この「サウンドトラック」とは、完成された曲から歌や一部の楽器を抜いて、特定の楽器の音だけを流すというもの
そこから徐々にほかの楽器が加わり、彼の歌が加わったところでライブ映像になる…というものがあちこちにあった
「このフレーズどっかで聞いたぞ」とマニアに匂わせ、曲になって「やっぱりこの曲のフレーズか」とうならせる「一見さんお断り」の仕様だ

この映画。おそらくヒットはしないだろう
でも、ボウイ様を崇拝するものだけが楽しめばよい

ボウイ様を知りたければ、その背景なぞ関係なしに、残された作品をただ聞いていればよい
傑作ぞろいなのだから

DAVID BOWIEの記事

「Space Oddity」

「The Rise & Fall Of Ziggy Stardust & The Spiders From Mars」

「Diamond Dogs」

「Low」

「HEROS」

Live Santa Monica '72



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October 28, 2019

映画 「Tommy」

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近所の映画館「みなみ会館」がこの夏に移転リニューアルオープンした
いわゆる「マニアックな映画館」で、古い作品や単館上映の作品などを取りあつかってる
そのオープニング時に「上映予定」とされている中に「さらば青春の光」と「Tommy」があった
ともにThe Whoのアルバムを基にした映画だ

で、やっと今週上映されたので早速観に行った
昨晩、家にDVDがある「さらば青春の光」を観て(昔レビューしてます)待望のTommyだ

この映画とは、映画雑誌の情報とFMの映画音楽特集を楽しみにしてた小学生時代に知ったと思う
まだ The Who をそれほど知らなかった時代、映画音楽としてこの映画のテーマがお気に入りだった

後にレコードショップでThe Whoの「トミー」を買って、その曲が入っていなかったことに嘆いたものだ
というのも、私が買ったLPの「トミー」がロックオペラのコンセプトアルバムとして60年代に発表され、それを元にミュージカル映画として作られたのがこの作品
映画の方のサントラ盤も、様々なニュージシャンが営巣してて名盤だ

ちょっとネタバレ交じりだけど…

この物語は、ある事件で「見たことを忘れろ、誰にも言うな」という精神的なロックをかけられた少年が心を閉ざし、そのことを悔やむ母の葛藤が軸になっている前半
母親役のアン・マーグレットの美しさと歌声は特筆もの

その治療過程で出てくる怪しげな「モンロー教」の教祖にエリック・クラプトン
バックを固めるジョン・エントウィッスルのベースは抜群
その洗礼としてドラッグとアルコールを施すのだが…
過去にドラッグやってたり、のちにアルコール依存で苦しむ彼にとっては何とも皮肉な役(苦笑)
あと、アシッド・クイーンのティナ・ターナーが圧巻
その歌唱力は必見


ピンボールと出会い、心は閉ざしたままヒーローになる中盤
金持ちにはなるけれど、心は閉ざしたままのトミーに心を痛める母

そして、トミーの逃げ場所である”鏡”を割ることで、インナーワールドから解放される
その体験をもとに、「なにかからブレークアウトしたい」人たちから崇拝されるようになる
しかし、その違和感と葛藤、やがて信望者から非難を受け…


最後は、すべてを失うことで、崇拝すべきは「外にある」と気づき叫び歌いつづける
この「外」っていうところが、いかにも「主をあがめる」ように聞こえるのがイギリス作品らしい

「私を見て、私を感じて」
と訴えていたトミーが

「あなたの存在が 私に音楽を聴こえさせ
 あなたの姿が 私に熱を感じさせる
 あなたを追うことで 私は山を登り
 あなたの歩みが 私の心を躍らせる」

と、これらのドラマがかなりサイケに展開していきます
そこがロックファンにはたまらない(苦笑)

大音量の劇場で見て間違いなかった映画です

 

オリジナルアルバムの「Tommy」を紹介して記事はこちらです
The Who - Tommy

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September 08, 2015

久々に「The Wall」を観た

せっかくブログのアップを再開したので、気まぐれで軽い感じで。

久々に時間が空いた日曜の夕暮れ
ちょっと映画でも見ようとDVDラックを漁る。

前週に息子らが出演したミュージカルで、欧州(革命時代だけど)の裁判シーンがあった。
そこでの群集が被告を責め立てる場面から、この映画を連想してたので久々に見ようかな、と。

Pink Floydのコンセプトアルバム「The Wall」を映像化した作品。
映画のレビューは以前アップしてるので、以下のページ参照で。

「The Wall」

最近、ロジャー・ウォーターズが旧作をリマスターしたりして、雑誌やWebでもよく名前を目にするし、デイブ・ギルモアも新譜出るようだし、フロイド熱が再燃してるか?

で、そのとき居間に居た息子に「裁判シーンがあるし見るか?」と。
映画好きの次男とはいろいろ見に行ったりもするけど、長男と二人で映画ってあんまりなかったなぁ。

息子のミュージカルが、革命時代のイギリスとフランスを描いていた事もあるので、序盤のノルマンディ描写でドーバー海峡に食いついたり。
本編でアニメーションを多用してるので、美術部の息子はそこに食いついたり。

自分自身を振り返ったら、中坊のころはプログレにはまってたから、中3の息子でも難しくは無いかな?
一応最後まで一緒に見てくれた。

音楽的には「Another Brick In The Wall partⅡ」が一番良かったようだ。
やっぱり判りやすいのがいいんね。
アルバム発売当時も、この曲だけ取り上げられてたもんね。
プログレ=トータルコンセプト と頑ななプログレオヤジとしては、ポイントはいっぱいあるけどねぇ。

次は、むりやりヘッドフォンの大音量で「狂気」でも聞かせてやろうか(笑)

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March 01, 2011

Trent Reznor 「The Social Network」

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アカデミー賞での「作品賞」は取り損ねたが、「作曲賞」としてトレント・レズナーがオスカーを手にした。

ノミネートされたほかの作品を観ていないので、比較しての話はできないが、この「ソーシャル・ネットワーク」での世界観と彼の音楽はすごくマッチしていて、しかも私の好みだったので、この受賞はうれしい。

トレント・レズナーはNIN(ナイン・インチ・ネイルズ)のフロントマン。
というか、NINそのもの。
かなり内向的な世界観を、時には暴力的な、時には叙情的なサウンドに載せて作品を作っている。
その発表方法も近年はネット配信を利用して、安価にリスナーに届けるシステムを確立している。
(だからこのアルバムもアマゾンなどで安価で提供されている)

映画「ソーシャル・ネットワーク」のサウンドトラックとして考えるならば、かなりのロックサウンドが挿入歌として使用されていたので、それらを集めたアルバムがあればかなりヒットするだろう。
かつて(80年代かな)の青春映画など、ヒットチャートのベスト盤かと思えるようなサウンドトラックアルバムが多々あった。
(トップ・ガン、フラッシュダンス、フットルースなど)
しかし、「ソーシャル・ネットワーク」のサントラとして世にでているのは、劇中BGMとして流れていたインスト曲のみで構成された本作。
なので、サントラとして聞くよりも、トレント・レズナーが映画のために書き下ろしたソロ作品として楽しむことが出来ると思う。

ピアノ中心の静かな曲と、電子音の洪水のような曲…
癒しであったり、不安を想起させるものであったり…

うん、いい作品だと思いますよ。



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February 05, 2011

映画「ソーシャル・ネットワーク」

Sns

 

久しぶりにロードショーものを映画館で観た。
(リバイバルものは最近行ってるけど)
記憶をたどれば、「ロード・オブ・ザ・キング 王の帰還」以来じゃないだろうか(何年ぶりだ?)
実は「絶対観にいこう」と思ってたわけではなく、昨年末の「歳末大売出し抽選会」で劇場招待券(劇場の券で観る映画は指定なし)をあて、その期限ギリギリにやっている中から選んだ一作。
仕事なんかで疲れ気味だったから、もっと気軽に見れるアクション物や和物もあったけど、どうせ観るならと。
これが大正解。
この映画に出会うために、チケットがあたったんだと思えるぐらい。

 

 

いきなり早口で喋り捲る青年。
同じく早口で感情的になる少女。
バックには渋いギターサウンド(ここでWhite Stripesに出会うとは思ってなかった)
うーん、字幕についていくのが精一杯だ。
もうちょっと後ろの席で、全体が俯瞰できるほうがよかったか…との後悔も後の祭り。
でも、気がつけばそんな憂いなどどこかにいって、ドラマに引き込まれていた。

 

 

派手な展開でもなければ、淡々とした展開でもない。
とてもいいテンポ。
さらには、BGMが私好みで(Sigur Ros や Mogwaiを髣髴させる)気分よく浸っていた。
そう、気がつけばエンディングを迎えていたのだ。

 

確かに、物語が盛り上がって終わると言う感じではない。
だからよけいに「えっもう終わり?」って感じ。
でもしっかり2時間経ってる。
時間の経過を感じないほどひきこまれているからこそ、終わった感に気づけなかった。

 

ここからはネタばれも含めて
大まかなネタは実話に基づきながら、ドラマになるために脚色が施されている。
で、訴訟にまつわる場面から回想的に「フェイスブック」が育っていく過程を振り返っていくんだけど、最初の会話からネットハッキングへの場面があったから「時間軸で進行していく」と思い込んでて、訴訟場面との切り替えになれるまでに戸惑った。

 

当初うまくやっていた仲間
利用するために近づいた(お互い様だけど)仲間
憧れであり、強く影響を与えた仲間

 

主人公を中心に様々な出会いと確執(訴訟相手という関係)を描くドラマなんだけど、今から思えば主人公は常にどの関係も一定の距離を置いていて、パーティーや乱痴気騒ぎに出かけることがあっても、ひとりさめてPCに向かっていく。
自分から関わりを求めていったのはただひとり、最初に彼を振ることになるエリカだけだ。

 

結局このドラマは、エリカとの関係をふたたびつなぎたいために(その時点ではそのつもりはなくても潜在的にその意志はあった気がする)彼は「自分のしたいように」やっていることでフェイスブックという巨大な成長企業・システムが作られていき、人間関係が崩れていく…というか翻弄されていくことが描かれている。
最後、訴訟の審問が終わり、ひとりPCの前に座った彼が、フェイスブックに登録しているエリカに「友達リクエスト」を送り、繰り返し繰り返しリロードさせて返事を待つシーンで終わりを告げている。
訴訟沙汰で周りの人間が離れていったから彼女とのつながりに戻ったという見方もあるみたいだけど、やっぱり最初からエリカとのつながりのためにすべてのドラマがあったように思える。

 

そう、サクセスストーリをうらやみ、裏切りや離反で溜飲を下げるドラマではなく、単純な青春ラブストーリなんだ。
ただ、主人公の性格付けに、フェイスブック創業者という立場があっただけで、私(の青春時代)となんら変わりのない「誰かとつながっていたい」という物語なんだ。

 

ただそれだけではあるんだけど、誰が作っても良かったんじゃなくて、デビッド・フィンチャーの映像テクニックとテンポあってこそ。
そこは賞レースにノミネートされて当然のうまさがある。

 

挿入歌もなかなか素敵で、オープニングのWhite SripesからエンディングのBeatles「Baby Youre Rich Man」(皮肉たっぷりだ)まではまってるし、BGM的に流れるピアノとノイズの音楽も秀逸だ。
帰ってから調べたら担当はトレント・レズナーで昔から好きな「NIN」(ナイン・インチ・ネイル)のフロントマン。
NINではもっとゴリゴリのノイジーなイメージがあるけど、確かに最近はピアノ中心の静かなものもよく作ってた。
ただ、Sigur RosやMogwaiのような欧州独特の陰ではなく、USAのダークな感じだけど…デビッド・フォンチャーの世界観にはうまくはまってる。

 

最後に挿入歌の情報が知りたくて、エンドロールをじっくり見てたけど、かなりの時間を割いてCG担当者の名前や企業がクレジットされてた。
そんなにCG使ってたっけ?と思い返すと、ビル・ゲイツの講演に参加してる場面は多分当時の映像をCGえうまく組み合わせたんだろうなと。
と思ってたら、帰ってからあちこち見てたキャスト情報などから、重要な役どころで露出も多い双子のマッチョ青年が一人の役者だと…
そこにCGが使われてるんだろうなぁ。
こいつはやられちゃいました。
双子のいい役者見つけてきたもんだとばかり(笑)

 

もうじき発表のアカデミー賞で作品賞をとれるのかどうか…

 

 

 

 

 

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August 16, 2010

映画「イージー・ライダー」

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先日、デニス・ホッパーの訃報を聞いた後、ショッピングセンターの駐車場代を浮かすために何枚かDVDを買う機会があった際に選んだ1枚。
なかなか観る機会がなかったが、仕事はお盆休みで家族は帰省中というのんびりした時間がもらえたんで、昼間から鑑賞。

この映画は20代のころに深夜放送のテレビで見たのが最初だったと思う。
音楽のかっこよさと、バイクのかっこよさは覚えてるけど、ストーリは覚えてない。
ただ衝撃的なラストだけは鮮明に覚えてる。
もっとも、テレビの放映だからあちこちぶつ切りだし、CMも入るし、いい環境じゃない。


今回、DVDでじっくり観る事ができた。
いわゆるアメリカン・ロード・ムービーの典型で、おおっぴらなメッセージ性は控え、旅の意味や目的もおぼろげなまま、出会いとエピソードを旅でつないでいく。
ただ、そのつなぎである旅の風景が半端じゃなく、アメリカの大自然。
そこにサザンロックがばっちりはまる。

私も持ってた印象だけど、イージーライダーというとステッペン・ウルフの「ワイルドで行こう」(Born To Be Wild)で、いきなり全開!って感じだったけど、じつは最初はもっとブルージーな曲で始まり、「ワイルドで行こう」は都会から離れるときのテーマ的扱い。
あとの曲はその自然風景に合わせて、ゆるーい感じが続く。
ただ、そんな中でもジミヘンだけはインパクトが違ってた。
60年代後半では彼はまだ早すぎたんだなとしみじみ…。

と、音楽面でも楽しめるロックな映画だけど、ジャック・ニコルソンと出会ってからの展開は深い意味合いがあふれてくる。
アメリカに突きつけられた”自由”の意味。
この映画には現れないけれど、この時代はベトナム戦争の影響もあった。
人種問題も、この映画の舞台となる南部にはまだまだ根強いものがあった。
若者文化への理解の問題もある。
容姿や台詞の中に現れる「男の長髪」を自由の象徴とし、それを受け入れられない人たちとの埋められない溝。

序盤の田舎では、自由な主人公に対して「大地に根ざす」ことで卑下してる家族と出会うが、主人公はしれを素晴らしいことだと言うし、家族も快く”異端児”である主人公を迎える。
それに対し、後半に現れる、町を作り自分たちを守ろうとする人たちは異端を好まず排他する。
それにとどまらず…とこれはネタバレなんでやめておくが、とにかく自分の”自由(と思っているもの)”を守るためには、それ以外を認めないという極端な姿が。
そして、さらに衝撃のラストへ…


このブログでも何度か話題にしている「アメリカン・ニュー・シネマ」というムーブメント。
反体制の主人公が自由に生きて(あるいは自由を求めて生きて)、しかしながら単純にハッピーエンドでは終わらないという…
「俺たちに明日はない」「明日に向かって撃て」「真夜中のカーボーイ」「いちご白書」「バニシング・ポイント」「ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー」「スケアクロウ」「カッコーの巣の上で」「タクシー・ドライバー」…
ちょうど映画に興味持ち出した小学生のころに終焉を迎えたムーブメントだけど、やたらにかっこよく気になる映画があふれている。
もちろん、この「イージー・ライダー」もその代表作だ。

かつては憧れの象徴として…そしていつしか取り返せない青春の象徴として。
「金を稼ごうとしてるやつに自由はないのさ」
という劇中の台詞そのままに、あくせく働いているうちにあこがれていた自由にそっぽを向いていたんだなと。


中学生のころ、部屋にはこの二人の主人公がハーレーにまたがったモノクロのポスターを貼っていたことを思い出した。
たしかこのアングルのモノクロ版→Easy2


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May 15, 2010

The Rolling Stones 「Stones In The Park」

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もうすっかり放ったらかしで、なかなか再開のきっかけがつかめなかったこのブログ…。
私自身は他にもブログもってたり、SNSでの書き込みがあったりで、ブログから離れてるつもりは無いんだけど、ことこのブログに関してはじっくり取り掛かる時間が持てなかった。

その間、音楽を聴いてないかというと、常にいろいろ聞いてはいるし、新しく発表された音源も入手してレビューしたい思いはあったりする。

などといいわけばっかり書いてても進まないので本題。


先日、用事があって出かけた近所の百貨店に車を停めたので、駐車場代を浮かすために買い物をすることにした。
これはよくある話。
が、これと言って欲しいCDが見当たらない。
海外アーチストものは輸入盤のほうがはるかに安いし、国内ものも最近CDまで買おうと言うアーチストは少ない。
なつかしのアーチストにしても、こういうショップではせいぜいベスト盤かコンピレーション盤くらいしか扱っていない。

映画もめぼしいものはほとんど買い揃えたし…ってんで音楽DVDを物色。
どうせなら最近上映されて見に行き損ねたThe Rolling Stonesの「Shine A Light」を買おうかなと。
監督のマーティン・スコセッシも好きな監督だし、Stonesとの組み合わせは非常にそそるものがある。
しかし、置いてなかった…

で、運命のように手にしたのが「ハイド・パーク・コンサート」
物心ついたときからUK好きの私としては「ハイド・パーク」は憧れの地。
ミック・テイラーのお披露目コンサート。
それにブライアン・ジョーンズ追悼のコンサート(この二日前に彼は他界した)
そして、「オルタモントの悲劇」につながる、69年のフリーコンサート。
私の中でいくつものキーワードがパズルのようにぴたっとつながった。

ライブDVDだと思って見てみると、これはこのフリーコンサートをめぐってのドキュメンタリー。
演奏が途切れ途切れなのは残念だけど、逆にミック・ジャガーのインタビューなどでこのコンサートにかける思いが伝わってくる。

ドキュメントの進行上、曲順もばらばら。
本来のオープニングの追悼詩の朗読から「Love In Vein」への流れはクライマックスとして後半に持っていかれている。

逆に、つかみとして最初に流されたのが「Midnight Rambler」
もうこの曲だけで鳥肌もの。
演奏はひたすらルーズで、ルーズで、ルーズ。
それが良い。

「Satisfaction」にしても、今のライブならみんなでノリノリのナンバーだけど、このころはまだまだ気だるさが表に出ている。
ロックバンドじゃなくブルースバンドなんだと。

インタビューでミックも語っているが、どうしてもBeatlesとの対比が付きまとう。
録音したとおりに演奏することを目指したBeatlesに対して、ライブバンドとして録音時の演奏などお構いなしに、その場のグルーブに任せるStones。
やがてオリジナルどおりに演奏することが出来なくなったからライブをやめたBeatlesに対して、今なお現役でライブを続けるStones。

観客の反応も、演奏を聞かせようとするBeatlesのオーディエンスが演奏そっちのけで歓声(嬌声)で終始するのに対して、Stonesのオーディエンスは演奏に耳を傾け、身体はグルーブに任せて踊っている。
(ラリってるってこともあるけど)

今のイメージからは予想外だったのが、キースはじっと演奏していること。
ミックは今と同じく、このころからアクティブだけど、フライングV(!)をじっと奏でてる(と言っても演奏はルーズだけど)が以外だ。
逆にチャーリーのドラムが思ったより激しかったり…(ビル・ワイマンは今も昔も直立不動)

クライマックスは「Sympathy For The Devil」
アフリカンのパーカッション演奏から始まり、観客との掛け合いも含めて延々と奏でられる演奏。
ヒッピーも、モッズも、ヘルスエンジェルも、鍵十字崇拝者も踊ってる。

フリーコンサートということで、想定される問題に対してヘルスエンジェルと鍵十字ファッションのグループに警備を頼んでいる。
UKではこれが上手くいった。
しかし、USAのヘルスエンジェルは問題を起こし、「オルタモントの悲劇」を生んでしまった。

老獪にしてなおもエネルギッシュなStonesもいいけれど、このころのStonesも最高だ。

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