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March 24, 2025

映画「名もなき者」(A COMPLETE UNKNOWN)

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「名もなき者」(A COMPLETE UNKNOWN)を観てきました
最近「ROCKな映画」をよく見に行きますが、ドキュメントものが多く、ほとんどミニシアターでしたが、この作品は久々にシネコンでの上映作品です
(GET BACKはシネコンだったな)

シネコン上映ってことは話題作ってことでもあり、音楽好きに限らず鑑賞する人がいるだろうし、ボブ・ディランを名前と有名曲しか知らないような方(一緒に行ったうちの連れ合いがそう)も、「映画作品」として観たことでしょう
もちろん、私の周りのディラン好きやROCK好きの方もいっぱい観に行ってました

主演のティモシー・シャラメ君は「絶世の美男子」と言われるだけのことがあり、端正な顔立ちですが、演技も大したもので今作では少し薄汚れた感じの若者をうまく演じてました
また、ディランをしっかり研究したであろう、しぐさやしゃべり方、声のくぐもり方など素晴らしく、ウッディ・ガスリーと最初に出会ったときのセリフ一言で「あぁジマーマン(ディランの本名)だ」感心してから、ラストまでディランにしか見えなかった
さらにはギターの演奏や歌も、努力して身に着けて、違和感なく披露してくれました

「FREEWHEELIN」のジャケットでも有名なシルヴィとの出会いと別れ
ジョーン・バエズとのエピソード
様々なアーチストとの出会い
それらによって変化していくディランの心情が響いてきます
実際にはどの程度だったかわかりませんが、映画の物語として成立するような脚色はあるでしょう
だからこそ映画として見入ることができます(コアなファンには不満があるようですが)

秀逸なのは、差別主義やキューバ危機など、当時の世相をニュースで盛り込むことで、そこにカウンターさせるディランの詩の世界が深く意味を持ちます
私がディランを知り、聞き始めたころはもうそれらの時代は変わった後で、「初期のディランの詩」とひとくくりでしたが、その時その時の歴史を味わえたのはうれしいことです

物語はクライマックスのフォークフェスに向かって進んでいきます
同じような映画の草分けである「ボヘミアン・ラプソディ」では感動的なライブで盛り上がりますが、この作品のライブはカオスなものとなります
伝説として知っていた「ユダ!(裏切者)」の罵声、「ライアー(お前はうそつきだ)」と返すディラン、を目にすることができるとは
(実際はこのフェスとは違うライブでのやり取りだったと思うけど)

そういう背景も含め、「Like A Rolling Stone」の演奏は鬼気迫るものがあり、思わず目頭が熱くなりました
なんども問いかける How does it feel

With no direction home
Like a complete unknown
と問いかける

ディランを追ったドキュメントも、この作品も、この一説からタイトルがとられているほど象徴的な問いかけ


あと、「ハルク」や「ファイトクラブ」でも楽しませてもらったエドワード・ノートンが渋くて素晴らしかった

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March 11, 2025

映画「ヒプノシス レコードジャケットの美学」

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洋楽のレコードで最初に買いだしたのはBEATLESだけど、次にはまったのがPinkFloyd
この音楽ブログでも第1回目が「LET IT BE」
第2回目が「狂気」だったりする
(20年以上前に始めてたのか…)

で、そんなPink Floydと関係が深いのが「ヒプノシス」で、それは個人ではなくてユニットだというのは知っていたし、実際彼らの作品は何枚も持っている
今回、映画になったので観に行った次第
関わりのあった方々のインタビューで構成されてるけど、Pink FloydメンバーもZeppelinメンバーも、ここ数年でさらにお歳を召されたようで…おじいちゃんばかりがしゃべってる映画
各アルバムジャケットのエピソードはどれも興味深く、音楽でこだわりを見せたアーチストに負けず劣らずのこだわりぶり
そのぶっ飛んだアイディアと、それを受け入れるぶっ飛んだアーチストが居たから出来上がった芸術のあれこれだと再認識
売り手のレコード会社だけが、常識的な判断で反対するけど、それを押し通せたからあれらの作品があるんだな
面白いのは、そんなヒプノシスに対し、ポール・マッカートニーだけは最初から自分でアイディア持ってて、それを実現させるために彼らの技術を利用したという…やはりあらゆる面で非凡な人だ
あと、「聖なる館」のジャケットは、最初は子どもらにスプレーペイントしてあの岩場に置いて撮影するつもりだったというエピソード
雨のために断念したため、モノクロでペイントなしで撮影して後で着色したという
もし、ペイントして撮影してたら、虐待で発禁、さらには彼らが大人になってから訴訟されてかもね
しかし、作品中のシド・バレットのエピソードにしろ、最期は仲たがいした二人のことを、今生きてるポーが語る場面にしろ、そこに「Wish You Were Here」が流れるのは反則過ぎ

LP世代にとっては、やはり30cm四方のサイズは魅力的で、ジャケットはほんとにアートだった
表と裏で物語になっていたり、中には見開きになっていたり(表面だけでは完成せず、広げて初めて作品になる)
有名な「狂気」のジャケットは、プリズムと虹の表から、虹が鼓動になっている内ジャケットを経て、表とは逆向きのプリズムが虹を白い光に収束させて表につながるという無限ループに仕上がっている
Zeppelinの実質ラストアルバム「In Through the Out Door」などはLPが茶封筒のような袋に封入されていて、どんな写真か見えない
で、実は登場人物の視点ごとに6種類あって、どれが当たるかわからないというものだった

レコードを買いに行くと、一枚一枚引き上げながらジャケットを見てほしいレコードを探すというものだったから、お目当てのもの以外のアルバムアートを見ることもできたし、なんなら「ジャケ買い」などという、アート先行の買い方もあったりした

今の子どもらは、そんなLPジャケットの魅力は伝わらないだろうし、CDなだけでも小さくて価値が下がるのに、いまやアプリに表示されるだけのアイコンとなってしまった

今回、封切りの初日(平日昼間)に行ったので、そこそこ観客はいたが、ほぼ私と同じ年代(笑)
ヒプノシスと聞いて惹かれるのは、アートだったレコードジャケットを知っている人だけかな

余談として、作中に流れたZeppelinのライブ映像は素晴らしかった
大スクリーンで観るジミーやロバートは圧巻だ
今、劇場で「永遠の詩」やったらすばらしいだろうな
できれば爆音上映+声援ありで

 

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