« January 2024 | Main | July 2024 »

June 17, 2024

Pink Floyd 「The Dark Side Of The Moon」50周年記念イベント

00000316_eye_catch

アルバム「狂気」発売50周年記念のイベントに行った
50年前、このアルバムをプロモーションするのにプラネタリウムを利用したことにちなんで、プラネタリウムで特別映像と友に大音量、5.1チャンネルの音響で聴くというもの
もちろん、メンバーのライブではなく(キーボードのリックは亡くなってるし)、あくまでアルバムを聴くというものだ

思えば、50年前に発売された作品に触れたのは中1だから48年前か
(その思い出から語りだすと長くなるので、以前の記事をご覧ください
http://manu.moe-nifty.com/manu/2004/11/dark_side_of_th.html
擦り切れるくらい聞いたレコード
CDになってからも、MP3プレーヤになってからも何十回何百回と聞いている
ギターでも何度でもコピーに挑んだ(当然デイビッドの味は出せない)

このイベントを知ってか予定表を眺めてすぐに申し込んだ
そして待ちに待った当日

会場は私と同じ年代がほとんどだった気がする
アナウンスによると、この日は完売だったそうだ

プラネタリウムの天井を見上げながら演奏を聴く
映像はこのために作られたもので、宇宙のイメージ
ピラミッドをモノリスのように扱い、地球から月、太陽系、銀河、外宇宙と旅を続ける
アポロから始まり、ボイジャー、ISSなどが取り入れられ、宇宙を旅する
まぁ、映像はあまり期待していなかった
アルバム自身の完成度が高くて、ビジュアルの助けはいらない
それに、「Dark Side Of The Moon」というタイトルとプログレということでスペーシーなイメージも持たれるが、それは比喩で、本当はインナースペース、つまり私の内面、内なる狂気を表しているアルバムだから
(そのあたりも以前の記事で取り上げている
http://manu.moe-nifty.com/manu/2009/07/pink-floydthe-d.html

と、前置きが長くなってしまった(それだけまだ興奮状態にある)
では、今回のイベントで何が素晴らしかったか
それは大音量で、360度の空間で、このアルバムの音を聴けたこと

「Speak to Me」
おなじみの心音から始まる
アルバムジャケットの内側にある、プリズムで虹色に分かれた線を心電図のように鼓動が走る映像がプラネタリウムの壁を360度めぐる
笑い声などのSEが全天に広がる

「Breathe」
デイブのアルペジオとスライドギターが大音量で響き渡る
映像もいろいろ工夫してたけど、2001年宇宙の旅イメージなだけで、まぁ予想通り

「On the Run」
ひたすら回り続けるシンセサウンドとSEに浸る
アルバムで聴いているときより長く感じた気がする(もちろん気のせいだ)
そして目覚ましのベルとビッグベンの鐘が鳴り響く

「Time〜Breathe (Reprise)」
前奏の乾いたタムの音が初めて聴くくらいに響いてくる
これが大音量の効果だと思う
こんなにかっこいいと思ったのは初めてだ
またギターのディレイもしっかり音が分離してて、立体的な音響の効果が出ていた
欲を言えばベースの低音も大事なんで、もっと体中に響くように設定してほしかった
ライブ用の音響じゃないから、仕方ないかもしれないけど…

「The Great Gig in the Sky」
前半で一番期待していたナンバー
ピアノとスキャットだけの曲だけど、大音量でこのスキャットに没入するだけで身体が浮遊していく
母性をかんじるんだろうか、ゴスペル的なスキャットに包まれる安心感
緊張感漂うアルバムの真ん中でこの曲は活きている

「Money」
唯一ISS内のコンピュータ画像が映像の軸になってる
曲の「俗世間」性を表現したかったんだろうけど、ちょっと興ざめ
そういう俗っぽさを眺めているのが2001年のHALを想起させるレンズっていうのも狙いすぎた感じがして…
でも、サックスソロとデイブのギターソロとは満喫できる
オーバーダビングされた複数のギターが360度の空間を埋める音響は素晴らしい

「Us and Them」
この曲はベースの低音が良く響いていた
他の楽器が抑え気味の恩恵か
非常にきれいな曲だけど、この歌詞に隠された「戦争批判」を知っているとまた違って聞こえる
ボーカルのディレイが立体的に響いて素晴らしかった

「Any Colour You Like」
全曲で気持ちを盛り上げてクライマックスへと導くブリッジとなるインスト曲
一種のクールダウン効果か
ここでも複数のギターが分離されて空間を埋め尽くす

「Brain Damage」
デイブのアルペジオとチョーキングのフィルインが浮遊する
その中を告白するような「狂った内面」
歌詞を知らなければ、きれいな曲だと思うだろう
ゴスペル的なコーラスと混じりながら叫ばれる「I'll see you on the dark side of the moon」
素晴らしい、完璧だ
そしてクライマックスへ

「Eclipse」
数かすの言葉の羅列
それらが
「太陽の元ですべては調和している」
なんてポジティブな言葉
しかしそれがその次の歌詞で吹き飛ぶ
「でも太陽は月に覆い隠される」
出来事としては、毎日照らしてくれる太陽が「日蝕」によって隠される時がある
そう太陽を隠すのは「月」だ
「月」とは私の「狂気」の象徴
ここまで来ると、映像や音響はどうでもよくなっていた
ただこの言葉に大音量で包まれるだけだ
当然のように涙がこぼれていた

そしてすべての映像が消え去り、暗闇の中を鼓動だけが響き渡る
会場すべての人が余韻に包まれていた

至福の時間だった

 

 

 

| | Comments (0)

June 02, 2024

映画『シド・バレット 独りぼっちの狂気』

9999 

以前、エリッククラプトンのライブ映画を観に行ったミニシアターで予告編を観てからずっと気になってた映画「
シド・バレット 独りぼっちの狂気」が上映されたので観に行った
当日朝チケット予約をしたときは、平日のこともあって私一人独占状態
映画館につくとほかにも奇特な方がおられたようで、7・8名の観客が
(まぁ、私と同じ年代な感じ)

映画が始まり、俳優を使ったイメージパートをブリッジに、彼の生い立ちに合わせて関係者の証言が続いていく
気になったのは、そのイメージパート
BGMが「Shine on you crazy diamond」なのだ
もちろん、PinkFloydから入った私はこの曲の意味は知っている
しかし、Pink Floydに頼りすぎだという偏向イメージをもたせるものだ
思えば映画の和訳タイトルも「一人ぼっちの狂気」としている
原題は「Have You Got It Yet?」であり、狂気のかけらも何もない

そう「狂気」はPink Floydの代名詞だ
(まぁ、アルバム「狂気」も原題のかなり無理やりな意訳になっているが)
しかし「Shine on」も「狂気」も音楽としてはシドは関わっていない
シドの半生を探るのには最初期のPink Floydは良いとしても、ヒット作にあやかるのは…

と、相変わらずのへそ曲がりぶりを感じながら映画を観ていく
学生時代のエピソードから、バンド初期の創作活動
ライブの様子などを貴重な動画で観ていると、彼の才能にしびれてくる
こんな感覚に浸れるならドラッグ文化も捨てたものじゃないとさえ感じる
(60年代に英国で育っていたら私も染まっていたかもしれないとさえ思える)

絶頂期から混迷期へ
そして破綻
やはりドラッグはダメだ、触れないでよかったと思える

残されたメンバーや知人たちが振り返る姿
もちろん、今になっての美化はあるだろうが、なんとかソロアルバムを完成させようとする仲間たちの姿や、ヒット作のあとにあえて自己の内面をつらつらとつづるロジャー。ウォータースの姿
ここでやっと「Shine on you crazy diamond」が活きてくる

ある意味、このインタビューまでこの曲を封印していたら、さらに劇的にこの曲が作られた「その時」を衝撃的に味わえたかもしれない
すでにそのストーリーは様々な文献で知っていたにせよ、シドの歴史をなぞったうえでのロジャーの想いに触れることは涙なしに居られない

シドが居たからこそのPink Floydだということを改めて感じる

それにしても、パパラッチはなんて残酷なんだ

| | Comments (0)

« January 2024 | Main | July 2024 »