映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」
先日、子どもに約束してたハリポタのDVDを買いに言った際、ハリポタが3枚3000円キャンペーンで提供されていたのであと2枚をいろいろ考えた。
久々に「2001年 宇宙の旅」を観にいった余韻もあったので、そのうちの一枚はキューブリック熱から、この「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」を選んだ。
これでキューブリック作品は「2001年~」「時計仕掛けのオレンジ」「シャイニング」「フルメタルジャケット」「アイズ・ワイド・シャット」と代表作をDVDで所有することとなった。(あとは「ロリータ」と「バリーリンドン」だな)
長い原題を「各国で上映する際は忠実に訳したタイトルとすること」とのキューブリック監督の厳命でこのタイトルだが、本来は「Dr.Strangelove」というタイトルの最初の人名を忠実に「博士、異常な愛情」と訳し、通称「博士の異常な愛情」という傑作タイトルとなったのは有名な余談。
この映画が傑作だというのは、様々なランキングでも知っていたし、意必ず見たいと思っていた一作。
ブラック・コメディとは聞いていたが・・・うーん笑えない。
ある将軍の異常な精神状態で発せられた命令によって右往左往する人々を描いているけど、大きく3箇所でのドラマが同時進行していく。
1つは命令を受けた爆撃機内部でのドラマ。
最初は命令を事実と受け入れられなかったけど、一旦事実と認めたら着実に任務遂行に向かっていく。
様々なハプニングを迎えつつ、「命令は絶対」としながらも燃料の関係であっさり攻撃目標を変えたりと、そのゆがんだ忠誠度をあざ笑って描いている。
もう1つは、その命令をした将軍とその基地を巡る攻防。
将軍の執務室での副官とのやり取りや、その異常な命令を回避させようと迫り来る同じ米軍の部隊との攻防。
副官を演じているピーター・セラーズ(クルーゾー警部でおなじみ)の、いかにもイギリスっぽい律儀さと将軍の異常さのズレをあざ笑っている。
そしてもう1つが、大統領(これもピーター・セラーズ)を含む、戦略部でのやり取りでのエピソードが絡み合ってくる。
この機会にソ連を叩き潰したい将軍(ジョージ・C・スコットの名演)と大統領の攻防。
ソ連首相と大統領の電話でのやり取り(まるで喧嘩してる恋人をなだめるような軽い説得の言葉・・・)
そして、後半に登場する「Dr.Strangelove」(ピーター・セラーズ・・・これで一人3役)の異常な、人間的感情を無視した科学至上のゆがんだ思想
さらにこの博士は大戦中ドイツの科学者ってことで、大統領のことを「総統」と呼んだり、意思とは無関係に発作的に右手が動き、ナチス風敬礼をしたくてたまらなくなっていたりと。
いやぁ、あらためて書いてみると、こりゃぁ確かにコメディ以外の何者でもない。
でも、笑いよりも薄ら寒さを感じるのは、それぞれの人間が、異常なんだけども「ありえる」っていうリアルさで描かれているから。
しかし、最後にそんな気分を吹き飛ばしてくれるのがオチの表現。
爆弾にまたがったまま、カウボーイさながら歓喜しながら落ちていく爆撃機キャプテンの姿…これはぜんぜんリアルじゃない(笑)
でも、このシーンなんかでパロってたの見た覚えが…なんだったっけ?
そしてもう1つが「Dr.Strangelove」が週末を迎えた世界のさなかに車椅子から立ち上がって、右手を高く掲げて「総統!私は歩けます!」と言ったエンディング。
隠し持ってたナチスの精神が終局で発動したとか、地下坑道(シェルターとして)に入れる選ばれた民になるために身体的なハンデを克服したとか、様々な解釈があるようですが…逆に深い意味がなかったのだとしたら、そんな無意味なせりふで締めくくることで自らの作品をあざ笑うキューブリックの茶目っ気なのか。
これもどっかでパロディを見たような…ゆうきまさみだったか火浦功だったか…まぁマッドサイエンティスト好きのマニアにはバイブルみたいな人格だったしね。
と、とにかくキューブリックの異才(天才!)ぶりがこの時点で仕上がってる感じの作品。
ひたすら飛び続けるB52の表現だとか(2001年のディスカバリー号)、淡々と描かれる戦闘場面(フルメタル・ジャケット)、攻撃命令を出した将軍や徹底攻撃を支持する将軍のとり憑かれたような狂気(シャイニング)など、以降の傑作作品のエッセンスがここに現れているような・・・って完全に後付けの感想だけどね。
あまり一般的な映画じゃないと思うけど、英国っぽいシニカルな笑いが好きな方は面白いかも。
(そうか、これを突き詰めたのがモンティパイソンなのか…って、違うか)
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