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November 17, 2009

プログレの深い森 その4 Pink Floydの場合-1

Pink1

Pink Floydはメンバー的にはYESほどの迷走はしていない。
しかし、違った意味でどの時代が好きかというファン層による論争が絶えないバンドでもある。
私としては、このバンドほどプログレッシブを象徴しているバンドはないと思っているのだが。

1967年 夜明けの口笛吹き(The Piper At The Gates Of Dawn)
1968年 神秘(A Saucerful Of Secrets)
1969年 モア(More)
1969年 ウマグマ(Ummagumma) -Liveとスタジオの2枚組み
1970年 原子心母(Atom Heart Mother)

1971年 ピンク・フロイドの道(Relics) -初期のシングル集
1971年 おせっかい(Meddle)
1972年 雲の影(Obscured By Clouds)
1973年 狂気(The Dark Side Of The Moon)
1975年 炎-あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)
1977年 アニマルズ(Animals)
1979年 ザ・ウォール(The Wall)
1983年 ファイナル・カット(The Final Cut)

1987年 鬱(A Momentary Lapse Of Reason)
1988年 光-パーフェクト・ライブ!(Delicate Sound Of Thunder)-Live
1994年 対(The Division Bell)
1995年 P.U.L.S.E(Pulse)-Live
2000年 ザ・ウォール・ライブ:アールズ・コート1980-1981(Is There Anybode Out There? : The Wall Live 1980 - 1981)-Live

ロジャー・ウォータース ソロアルバム
1984年 ヒッチハイクの賛否両論(The Pros And Cons Of Hitch Hiking)
1987年 RADIO K.A.O.S.(Radio K.A.O.S.)
1990年 ザ・ウォール?ライブ・イン・ベルリン(The Wall - Live In Berlin)-Live
1992年 死滅遊戯(Amused To Death)

2000年 イン・ザ・フレッシュ(In The Flesh)-Live  

まずはデビューアルバム「夜明けの口笛吹き」は、シド・バレット(g/vo)が中心のサイケデリック・ロック。
プログレということ抜きに考えれば、「このアルバムがダントツ一番」というファンの言うこともわかる。
だって、この方針で作られたアルバムはこの一枚だけだから。
Pink Floydを語る上では重要なアルバムだけど、プログレを語るときはこのアルバムは抜きで。

で、2nd「神秘」からギターがデイブ・ギルモアに代わり、このメンバーがずっとPink Floydのメンバー。
ロジャー・ウォーターズ - Roger Waters(b/vo)
リチャード・ライト - Richard Wright(key/vo)
ニック・メイスン - Nick Mason (ds)
デヴィッド・ギルモア - David Gilmour(g/vo)

その後もまだ「プログレ」なんて言葉が生まれる以前に、サイケデリックと実験音楽を組み合わせたスタイルで数枚アルバムを発表し、「プログレ」のきっかけとなる「原子心母」というアルバムを完成させる。
LPのA面丸々を組曲「原子心母」という曲で占め、その曲はオーケストラと競演ということであり、またサウンドコラージュを多用した曲作りでもあり、革新的というよりは前衛的な雰囲気をロックに盛り込んだ傑作。
日本的にはこのアルバムで初めて「プログレッシブ・ロック」という言葉が使われたという説がある。

YESの時に、プログレの要素として「組曲的な長い曲」だとか「クラシックのような展開力」ということを書いたが、そういう意味ではこの曲はまさにプログレ。
ただし、YESに見られる様な「わかりやすいメロディ」は主題に現れるだけで、ほとんどはサウンドコラージュなため、新しい物好きには(現代ならば変わった物好き)受け入れられても、いわゆるロック・キッズには勧めがたい。
(B面には、ブリティッシュトラッドの優しい曲が並んでいるが…)

その後、これまた重要作「おせっかい」が発売される。
こちらはB面丸々が一曲「Echoes」で、上記のプログレ2要素に「宇宙観的広がり」という要素が加わる。
じっくりメロディを追いかけて聞いているような曲じゃない。
いわゆるトリップ状態で、ぼんやり20数分間意識を漂わせるに最適な曲である。
逆に言うと、こういう音楽が合わない方には退屈至極であろう。
また、このアルバムのA面1曲目「One Of These Days(吹けよか風、叫べよ嵐)」はプロレスがゴールデンタイムに放映されていた時代、アブドーラ・ザ・ブッチャー(今も現役でリングに上がっているから驚きだ)のテーマとして毎週のようにテレビから流れていた。
この曲がPink Floydだと知らない人も多いことだろう。

さらに「雲の影」をはさんで、いよいよ歴史的アルバム「狂気」が発売される。
「原子心母」「エコーズ」は組曲的な1曲だったが、このアルバムは数曲のアルバム全体によって「トータル・コンセプト」という方法を取っている。
つまり、1曲1曲は違う曲だが、それぞれをSEや短い曲でつないで、全部をひとつのテーマにそって展開していくという方法だ。
43分ほどの間、部分的にはなじみやすいメロディの曲でもあり、同時に一気に聞きほれてしまう世界観を持った作品…
詩的にも宇宙と内宇宙(インナースペース、精神世界)を組み合わせた幻想的なものだし、荘厳なスキャットや、後半の繰り返しを使った盛り上がり方など、今でも感動に打ち震える。

私は、これが「プログレッシブ・ロック」のひとつの極みだと思う。

その後、プログレとしてみると微妙な展開が待っているのだが…

(つづく)


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