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November 20, 2009

プログレの深い森 その7 King Crimsonの場合-2

King2

80年代になると、再びビル・ブラッフォードと組み、ギターにエイドリアン・ブリュー、ベースにトニー・レヴィンという豪華なラインアップで再び活動を開始した。
エイドリアンによるポップな歌メロや、幾何学的な組み合わせのギターデュエットなど、アルバム「ディシプリン」はジャンルを超えた、その時代の言葉で言うならば「ニュー・ウェイブ」なバンドとなっていた。
このアルバムも好きなアルバムだが、名前が同じだけで「宮殿」の頃とも「レッド」の頃とも違う方向性のバンドといってよい。
このメンバーでは、このあと「ビート」「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー」

の3枚のアルバムを残し、再び解散した。

90年代に入ってまたまた復活。
新たに二人のリズムセクションを加え、ギターがロバート・フリップ、エイドリアン・ブリュー、ベースにトニー・レヴィン、トレイ・ガン、ドラムスにビル・ブラッフォード、パット・マステロットという、ダブル・トリオという不思議な編成となった。
音的には「レッド」のころのメタル・クリムゾンをさらに発展させたもの。
まずはミニアルバム的な「ヴルーム」ついで、フルアルバムの「スラック」。
いつもなら再結成した流れで3枚ほどアルバムを作っていたが、このユニットはこの2枚で留まった。

しかし、ファンをあざ笑うかのごとく、この時期から過去のライブ音源を続々とアルバム化し、音源の良好なものは正規ライブアルバムとして、少し難のあるものはコレクター・シリーズとして発表される。
当初は貴重な音源が聞けると喜んでいたが、あまりに次々と発表されるので、いつしか買うのをやめるファンと、それでも集めずには居れないファンとに分かれていった。

大まかに診ると、
「クリムゾン・キングの宮殿」時代 - 「エピタフ」「エピタフ3&4」(今は「エピタフ1-4」として4枚組みで発売)
「リザード」「アイランド」時代 - 「レディース・オブ・ザ・ロード」
「太陽~」から「暗黒~」時代 - 「グレイト・ディシーバー - ライブ」「ザ・ナイトウォッチ」
「ディシプリン」から「スリー~」時代 - 「アブセント・ラヴァーズ」
「ヴルーム」「スラック」時代 - 「B・ブーム - ライヴ・イン・アルゼンチン」「スラック・アタック」「ヴルーム・ヴルーム」
と見事にあらゆる時代のライブも網羅している。
コレクターシリーズにいたっては、一度に3~6枚組みで、2000年から10パッケージも…

その間バンドは6人を組み合わせを変えた4つの編成にしてプロジェクト1~4という名前で、ライブをしてはアルバムを作り、良く言えば「可能性を求め」、悪く言えば「迷走」していく。
そしてプロジェクトXとして再び集合したとき、ビルとトニーが抜け4人編成で「ザ・コンストラクション・オブ・ライト」を発表(当然のごとく、その後「ヘヴィ・コンストラクション」というライブ盤も発売)
さらに「ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ」(ライブは「エレクトリック」)と発売した。
ロバート・フリップ先生は、クリムゾンの音楽を自ら「ヌーヴォー・メタル」と呼んでいる。
意識としてはメタルの進化系なんだろう。

その後2008年頃復活してライブを行うと言うアナウンスがあったが…


と、いちおう追っかけては見ましたが、あらためて「クリムゾン・キングの宮殿」につきるなと。
その栄光を追っかけてた4枚目まではプログレ思考だったかもしれないけれど、「レッド」以降はプログレと言うジャンルには納まらないですね。
そういうのも好きは好きですが。

ということで、プログレを知りたい方にお勧めするのは「クリムゾン・キングの宮殿」
あとは「太陽と戦慄」「レッド」の重たいクリムゾン、それを復活させた「スラック」あたりがROCKとしてお勧め。
まったく違うジャンル…しいて言えばニューウェーブの「ディシプリン」

収録曲だけ見て、「有名なタイトルが入ってる」からってライブ盤に手を出さないように。
即興好きなロバート・フリップ先生ですから、”深い”世界が待ってます。
いや、その”すごさ”を味わうにはライブがいいですけれど。

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November 19, 2009

プログレの深い森 その6 King Crimsonの場合-1

King1

次に紹介するのはKing Crimson。
ある意味、プログレ論として語るのは優しいバンド。
しかしKing Crimson論を語るとなると、私ごときの知識ではとても無理~

メンバーを追っかけるだけでえらいことになるくらいアルバムごとに面子が入れ替わる。
おまけに関連ユニットもいろいろある(これは割愛)


1969年 クリムゾン・キングの宮殿(In The Court Of The Crimson King)
1970年 ポセイドンのめざめ(In The Wake Of Poseidon)
1970年 リザード(Lizard)
1971年 アイランド(Islands)

1972年 アースバウンド(Earthbound)-Live(1972)
1973年 太陽と戦慄(Larks' Tongues In Aspic)
1974年 暗黒の世界(Starless And Bible Black)
1974年 レッド(Red)

1975年 USA(USA)-Live(1974)
1981年 ディシプリン(Discipline)
1982年 ビート(Beat)
1984年 スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー(Three Of A Perfect Pair)

1992年 グレイト・ディシーバー - ライブ1973?1974(The Great Deceiver)-Live (1973・1974)
1994年 ヴルーム(VROOOM)
1995年 スラック(THRAK)

1995年 B・ブーム - ライヴ・イン・アルゼンチン(B'Boom : Live In Argentina)-Live(1994)
1996年 スラック・アタック(THRaKaTTaK)-Live(1995)
1997年 エピタフ(Epitaph)-Live(1969)
1997年 エピタフ3&4(Epitaph Volume Three & Four)-Live(1969)
1997年 ザ・ナイトウォッチ -夜を支配した人々-(The Nightwatch)-Live(1973)
1998年 アブセント・ラヴァーズ(Absent Lovers: Live in Montreal)-Live (1984)
2000年 ザ・コンストラクション・オブ・ライト(The ConstruKction Of Light)
2000年 ヘヴィ・コンストラクション(Heavy ConstruKction)-Live(2000)
2001年 ヴルーム・ヴルーム(VROOOM VROOOM)-Live(1995・1996)
2002年 レディース・オブ・ザ・ロード(Ladies of the Road)-Live (1971・1972)
2003年 ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ(The Power To Believe)
2003年 エレクトリック(EleKtriK)-Live(2003)

で、プログレ論としてなぜ語るのが優しいかというと…

ジャンルとしてのプログレッシブ・ロックは1stアルバムだけ。
その後も進化し続けるその様は、進歩的・革新的という意味では唯一現在もプログレッシブなバンドである。
おわり。

とこれだけではちょっと寂しいので、少しは歴史を語ってみようかな。
でも、この人たちは「難解」ということさえ理解していれば、それ以上「難解」の中身を語るひつようなない、というか語れない。
(まぁ、それでも語れるセンスの良い人もいるらしいけど…笑)

乱暴に言えば、ロバート・フリップ御大が、その時々に実現したい音楽を、実現できる面子を集めて「King Crimson」という名前で発表しているだけ。
その中で唯一「クリムゾン・キングの宮殿」は、他のメンバー、イアン・マクドナルドやピート・シンフィールドの作り出す世界観が表に出ていた。
ハードでサイケデリックな「21世紀の精神異常者」からラストの壮大な「クリムゾン・キングの宮殿」までの5曲、いっさい捨て曲なし。
叙情性からインプロビゼーションの緊迫感まで。
動から静まで。
陰から陽まで。
もうこのメリハリ感とバランス感覚は他の追従を許さない。
いや、当のKing Crimsonでさえ、これ以上のものは作れなかった。

その後、メンバーチェンジを繰り返しながら「ポセイドンのめざめ」「リザード」「アイランズ」と比較的同じ方向性の作品を作り続けたが、ロバート・フリップ一人が残ることになった。

ここからメンバー一新の再結成となる。
すでに成功していたYESを脱退して加わったビル・ブラッフォードなどが加わり、傑作「太陽と戦慄」を発表。
即興演奏をベースにした曲作りは、身を入れて聞くのはしんどいが、そこから漂ってくるエネルギーには圧倒される(ジェイミー・ムーアのパーカッションなど鬼気迫るものがある)
ただ、プログレと言う感じではない。
その後一人抜け「暗黒の世界」さらにひとり抜け「レッド」と発表する3部作で「メタル・クリムゾン」が完成される。
この「レッド」は、ブリティシュ・メタルのひとつのルーツといっていい。
即興性はあるものの、やはりプログレとは一線を画す。

(つづく)


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November 18, 2009

プログレの深い森 その5 Pink Floydの場合-2

Pink2

アルバム「狂気」は28年以上もTOP200のチャートに載りつづけると言うギネス記録にもなるほどの売れ行きを示した。

そんな中、「炎~あなたがここにいてほしい」が作られる。
前作のヒットによる期待もあり、またジャケットもビニールで包装されて空けないと中のジャケットが見えなという革新的なお遊びもあり、ファンはよりプログレッシブな音を期待していたと思う。
しかし、SEやSF的な曲があるものの、プログレッシブロックと言うよりはブルース感の強いアルバムになっている。
詩の内容はよりインナースペースに向かっており、名曲「Wish You Were Here」は、盟友シド・バレットに贈られた…というか、狂気の向こう側に行ってしまったシドに対するレクイエムのようなもの。
名演奏と言ういう意味では「狂気」よりこちらのアルバムのほうがわかりやすいロックで軍配が上がるが、やはり比べてしまうとこれはプログレではない。

さらに「アニマルズ」が発売されるが、こちらは詩の世界に重要度があり、演奏と言う点ではロック色が強くなっている。
つまり、さらにプログレから離れてしまっているのだ。

この2枚のアルバムは、詩やコンセプトと言う部分ではロジャー色が強いのだが、演奏はデイブ色が強く、ギターアルバムといっても良いくらいギターが主役だ。

そしてその次に来るのが問題作「ザ・ウォール
こいつもファンからは賛否両論ですが、とにかく”売れた”
LP2枚組みの「コンセプト・アルバム」
その大仰な感覚は先進的とも言えるかもしれないけど、やはりプログレって感じじゃなかった。
とういか、この時代は「プログレ=オールドウェイブ」という、先進なんだか後退なんだかわからんカテゴリになってたし。
ただ、この「ザ・ウォール」というのは、単なる音楽アルバムの枠を超えている。
まずは、世界で数回しか行われなかったコンサートは、演奏中に客席とステージの間に「壁」を築いていくというパオフォーマンス。
なぜなら、この「壁」と言うアルバムは元々、コンサート中に客席との何らかの壁(隔たり)を感じたロジャーが表現したかったコンセプトを基に作られたアルバムだから。
それを忠実にビジュアル化したコンサートだった。
当時は写真でその様子を見、いつか見てみたいと思ったもんだが…実現は当然しなかった。
次にこのアルバムをもとに映画として映像化された。
この時点で「ザ・ウォール」というのは単なるアルバムではなく、様々なメディアを横断する作品、いわゆるミクスチャーとなっていく。
これはある意味プログレッシブ(革新的)だけれども、音楽としてのプログレとはちょっと違う。
その後、ベルリンの壁が崩壊すると言う予期せぬ出来事が起こった後、その時点ではもうPink Floydから脱退していたロジャーが、様々なアーチストをゲストにこの「ザ・ウォール」コンサートを再現している。

こうして、「ザ・ウォール」と言う作品は、オリジナルCD、ライブパフォーマンス(近年この様子がライブCDとして発売された)、映画ベルリンのコンサート(DVD・CD共にあり)と様々な形となり、単なるプログレというカテゴリーには当てはまらない、ROCKの歴史的なアイコンとして認識されることになる。

で、私としては、プログレと言うことでは語れないが、スピリッツとしてのROCKアルバムとして、今でも重要な作品としてお勧めする。

4人のPink Floyd…といいたいところだが、実は「ザ・ウォール」の途中でキーボードのリックがメンバーから外される。
ただし、サポートメンバーとしてクレジットはされている。
この辺からメンバー構成がややこしい。

次作「ファイナル・カット」に関しては、限りなくロジャーのソロに近いものになっている。
音作りも、これまでのアルバムに比べ非常に地味な仕上がりになっている。
そして、この作品でPink Floydは一旦幕を引いた。

数年後、デイブとニックによってPink Floyd名義の「鬱」が発表された。
リックもサポートとしてクレジットされ、3人のメンバーがそろったので「こちらが本家」と主張するが、すでにPink Floydを終わらせソロになっていたロジャーは名称の使用を認めなかった。
私としても、終盤のイニシアチブから、ロジャーのいないPink Floydは認めたくない。
したがって、YESのときと同様、これはPink Floydという名前の別バンドだと思って欲しい。
でも、来日した際、コンサートを見に行ってしまった。

このユニットは、その後もう一枚「対」というアルバムと、2枚のライブ盤を残した。

一方、ロジャーの方もソロアルバムを出し続け、結構良い作品を残しているが商業的には成功していない。
「死滅遊戯」なんかはかなりクオリティが高いコンセプトアルバムだと思う。
こちらも来日したときにコンサートを見に行った。

デイブ中心の「Pink Floyd」コンサートは、そのステージングに派手にお金をかけ、豚は飛ぶは映像は派手だは、しまいにミラーボールが舞い上がり大きく割れて光の洪水をもたらすはで、とてつもなくエンターテイメントだった。
また、演奏面でもロジャーの代わりは十分埋められ、音としては十分なものだった。

一方、ロジャーのコンサートはビジュアル的には負けている。
しかし、その詩の世界を牛耳っていたロジャーには説得力がある。
単なるヒットパレードのデイブ・フロイドに対して、ソロも含めた構成は無駄がない。
すべての詩がわかっているわけではないが、コンセプトが感じられる。
演奏も、サポートミュージシャンがそつなくこなしている。

こう書くと、4人が揃わなくても良いんじゃないかという…
しかし、この4人が揃ってパフォーマンスしている「ライブ・アット・ポンペイ」の映像などを見ていると、このかけがえのない4人が奏でる世界は、まぐれもないプログレなのだ。

近年、たまたま4人が揃ってパフォーマンスする機会があったが、単なるヒットパレードでしかなかった。
それでも喜ぶ人が多いから否定はしない。
しかし、それはプログレバンドではない。

Pink Floydは確かにプログレバンドだし、その最重要なアイコンである。
その片鱗は、多少聞き辛いかもしれないが「原子心母」「おせっかい」「狂気」で味わって欲しい。
あと、「ライブ・アット・ポンペイ」の神秘的な映像とマッチした演奏は、プログレとしてのひとつの完成形(視覚・聴覚あわせての表現)だと思う。

そして他にはない味のロックバンドとして「炎」「ザ・ウォール」をぜひ聞いて欲しい。

プログレの中の一バンドじゃなく、追従するもののいないオンリーワンの存在として。


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November 17, 2009

プログレの深い森 その4 Pink Floydの場合-1

Pink1

Pink Floydはメンバー的にはYESほどの迷走はしていない。
しかし、違った意味でどの時代が好きかというファン層による論争が絶えないバンドでもある。
私としては、このバンドほどプログレッシブを象徴しているバンドはないと思っているのだが。

1967年 夜明けの口笛吹き(The Piper At The Gates Of Dawn)
1968年 神秘(A Saucerful Of Secrets)
1969年 モア(More)
1969年 ウマグマ(Ummagumma) -Liveとスタジオの2枚組み
1970年 原子心母(Atom Heart Mother)

1971年 ピンク・フロイドの道(Relics) -初期のシングル集
1971年 おせっかい(Meddle)
1972年 雲の影(Obscured By Clouds)
1973年 狂気(The Dark Side Of The Moon)
1975年 炎-あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)
1977年 アニマルズ(Animals)
1979年 ザ・ウォール(The Wall)
1983年 ファイナル・カット(The Final Cut)

1987年 鬱(A Momentary Lapse Of Reason)
1988年 光-パーフェクト・ライブ!(Delicate Sound Of Thunder)-Live
1994年 対(The Division Bell)
1995年 P.U.L.S.E(Pulse)-Live
2000年 ザ・ウォール・ライブ:アールズ・コート1980-1981(Is There Anybode Out There? : The Wall Live 1980 - 1981)-Live

ロジャー・ウォータース ソロアルバム
1984年 ヒッチハイクの賛否両論(The Pros And Cons Of Hitch Hiking)
1987年 RADIO K.A.O.S.(Radio K.A.O.S.)
1990年 ザ・ウォール?ライブ・イン・ベルリン(The Wall - Live In Berlin)-Live
1992年 死滅遊戯(Amused To Death)

2000年 イン・ザ・フレッシュ(In The Flesh)-Live  

まずはデビューアルバム「夜明けの口笛吹き」は、シド・バレット(g/vo)が中心のサイケデリック・ロック。
プログレということ抜きに考えれば、「このアルバムがダントツ一番」というファンの言うこともわかる。
だって、この方針で作られたアルバムはこの一枚だけだから。
Pink Floydを語る上では重要なアルバムだけど、プログレを語るときはこのアルバムは抜きで。

で、2nd「神秘」からギターがデイブ・ギルモアに代わり、このメンバーがずっとPink Floydのメンバー。
ロジャー・ウォーターズ - Roger Waters(b/vo)
リチャード・ライト - Richard Wright(key/vo)
ニック・メイスン - Nick Mason (ds)
デヴィッド・ギルモア - David Gilmour(g/vo)

その後もまだ「プログレ」なんて言葉が生まれる以前に、サイケデリックと実験音楽を組み合わせたスタイルで数枚アルバムを発表し、「プログレ」のきっかけとなる「原子心母」というアルバムを完成させる。
LPのA面丸々を組曲「原子心母」という曲で占め、その曲はオーケストラと競演ということであり、またサウンドコラージュを多用した曲作りでもあり、革新的というよりは前衛的な雰囲気をロックに盛り込んだ傑作。
日本的にはこのアルバムで初めて「プログレッシブ・ロック」という言葉が使われたという説がある。

YESの時に、プログレの要素として「組曲的な長い曲」だとか「クラシックのような展開力」ということを書いたが、そういう意味ではこの曲はまさにプログレ。
ただし、YESに見られる様な「わかりやすいメロディ」は主題に現れるだけで、ほとんどはサウンドコラージュなため、新しい物好きには(現代ならば変わった物好き)受け入れられても、いわゆるロック・キッズには勧めがたい。
(B面には、ブリティッシュトラッドの優しい曲が並んでいるが…)

その後、これまた重要作「おせっかい」が発売される。
こちらはB面丸々が一曲「Echoes」で、上記のプログレ2要素に「宇宙観的広がり」という要素が加わる。
じっくりメロディを追いかけて聞いているような曲じゃない。
いわゆるトリップ状態で、ぼんやり20数分間意識を漂わせるに最適な曲である。
逆に言うと、こういう音楽が合わない方には退屈至極であろう。
また、このアルバムのA面1曲目「One Of These Days(吹けよか風、叫べよ嵐)」はプロレスがゴールデンタイムに放映されていた時代、アブドーラ・ザ・ブッチャー(今も現役でリングに上がっているから驚きだ)のテーマとして毎週のようにテレビから流れていた。
この曲がPink Floydだと知らない人も多いことだろう。

さらに「雲の影」をはさんで、いよいよ歴史的アルバム「狂気」が発売される。
「原子心母」「エコーズ」は組曲的な1曲だったが、このアルバムは数曲のアルバム全体によって「トータル・コンセプト」という方法を取っている。
つまり、1曲1曲は違う曲だが、それぞれをSEや短い曲でつないで、全部をひとつのテーマにそって展開していくという方法だ。
43分ほどの間、部分的にはなじみやすいメロディの曲でもあり、同時に一気に聞きほれてしまう世界観を持った作品…
詩的にも宇宙と内宇宙(インナースペース、精神世界)を組み合わせた幻想的なものだし、荘厳なスキャットや、後半の繰り返しを使った盛り上がり方など、今でも感動に打ち震える。

私は、これが「プログレッシブ・ロック」のひとつの極みだと思う。

その後、プログレとしてみると微妙な展開が待っているのだが…

(つづく)


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November 16, 2009

プログレの深い森 その3 YESの場合-2

Yes2


80年代にはいって、時代はPVで流せる短い時間での表現に。
さらにはビジュアルが凝っていれば曲も売れるという時代。

YES休止後(解散でも良いと思うんだけどね)スティーヴ・ハウとジェフ・ダウンズは、カール・パーマー(ex ELP)、ジョン・ウェットン(ex King Crimson)と「ASIA」というバンドを結成。
面子はプログレ畑の大御所だし、キャッチーなメロディを大袈裟なサウンドに乗せて大成功。
しかし、どこをどう探してもプログレ要素はなく(大仰という要素はあるか)POP・ROCKバンドでしかなかった。

残されたクリスとアランが、トレヴァー・ラビンと組んで「CINEMA」というバンドをはじめたとき、YESオリジナルメンバーのトニー・ケイをキーボードに迎え、さらにはボーカルをジョンに取らせようという時点で、元YESが4人も集まったことでなんとバンド名を「YES」にしてしまった。
しかし、曲のイニシアチブをとっていたのはトレヴァー・ラビンで、過去のYESサウンドとは一線を画する。

ところがこのメンバーの「Owner Of A Lonely Heart」が大ヒット。
トレヴァー・ホーンの名プロデュースやPVの完成度もあり、再び「YES」の名がシーンに浮き上がってきた。
でも、これはプログレバンド「YES」ではなく、POP・ROCKバンド「YES」なのだ。

おそらく80年代から洋楽に親しんだ人たちは、この「CINEMA-YES」が「YES」だと思い込んでるだろうし、それは仕方ないことだ。
逆にこの「CINEMA-YES」をしてプログレはこういうもんだと思われているのなら非常に寂しい。

この「CINEMA-YES」も「ロンリー・ハート」「ビッグ・ジェネレイター」の2枚のアルバムを残し、消滅していった。

この後、さらに事態はややこしくなってくる。
ツアー終了後にYESをはなれたジョン・アンダーソンは、ビル・ブラッフォード、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハウと組んで「ABWH」(4人の頭文字)を結成する。
そう、ベースがクリスではないものの、私が「これがYES」と思っている面子だ。
ベースにはビルの盟友トニー・レビン(King Crimson)が入り、その器用さプラス独特の味で持って、ライブではYESの名曲を再演していたのである。
アルバム「閃光 - Anderson Bruford Wakeman Howe」は、ここ数年の「YES」名義のアルバムより、よっぽど「YES」らしく、その展開力、奥深さは満足できるものだった。(音作りがデジタルになって、ちょっとキンキンするけど)

これで「YES」というバンドの歴史は終わったな、とみんな思っていたのだが、更なるどんでん返しが待っていた。

「ABWH」が2枚目のアルバムを作り出したとき、トレヴァー・ラビンにサポートを依頼し、クリスをコーラスで参加させ…なんと「CINEMA-YES」と「ABWH」が合体してしまったのだ。
ジョンをボーカルに、ギターがスティーヴとトレヴァー、キーボードがトニーとリック、ドラムにビルとアラン、ベースがクリス…
「8人YES」となってしまった。
元々「ABWH」の2ndとして発表されるアルバム「結晶」は「YES」名義となり、8人で世界ツアーが行われた。
なかばあきれていた感もあるが、結果として「危機」時代のメンバーが揃って「こわれもの」「危機」時代の曲を演奏する…この魅力につられ、多くのファンがライブ会場に足を運んだことでしょう(私もその一人)

このあと当然のごとくメンバーが一人抜け二人抜け…気がついたら「CINEMA-YES」めんばーとなり、「トーク」が録音されるけど、このアルバムは各パートの演奏をハードディスク録音し、それをデジタルで切り張り処理するという…いうなればトレヴァー・ラビンがYESメンバーの音素材をデジタルコラージュして作り上げた作品。
まぁ、あらかじめ曲全体の構想があって、それに沿って録音しているから単なるコラージュではないと思うけど、ラストの「Endless Dream」なんかは15分の大作(プログレっぽい)なのにバンドとしての統一感が薄いという…。

その後気がついたらギターにスティーヴ、キーボードにリックといういわゆる黄金期メンバーが集まり、「YES」としてツアーを初め…
もうこのあとは、リックがまた脱退しただの復帰しただの、オーケストラと競演しただの、35周年つあーだの…
とりあえず、メンバーが元気なうちは往年の名曲を演奏して、ファン(?)に楽しんでもらおうという姿勢のようだ。


と、ざっと歴史をなぞっていくだけでも疲れてしまう(読んでくれてる人もなにがなんだかわからんかもしれない)
で、結局何が言いたいかというと、その長い歴史の中で、「プログレバンド」として評価できるのはほんの一瞬で、同じ「YES」という名前でもプログレとして聞いてしまうと誤解を招くこともある。
一方で、プログレじゃない「YES」を好きだったり懐かしんだりする人もいるだろうから、そういう方に向かって「その時期は本当のYESじゃない」なんて排他する気もない。

結局、彼らが「YES」というネームバリューに固執して、その名前でアルバムを乱発してしまったこと…これは他のプログレバンドと呼ばれるアーチストにも共通する困った点だ。


なので、プログレとして「YES」を聞いてみたい方には、まずは「サード・アルバム」「こわれもの」「危機」「リレイヤー」をお薦めする。
あと、80年代にプログレが生きる道を模索したらこんな感じだろうという「閃光(Anderson-Bruford-Wakeman-Howe)」もお薦めする。

あと、ライブ盤「イエスソングス」もいいだろう。
一部を除いて、ドラムがアランになっているのが残念だが。

もちろん「トーマト」「ドラマ」「90125」とか一時代を築いたロックアルバムとしてお薦めするアルバムもあるのだが、この辺でプログレを判断して欲しくないな、という。

かくのごとく、プログレを語るとその「迷いの森」は深く深くたたずんでいる…


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November 15, 2009

プログレの深い森 その2 YESの場合-1

Yes1


ではまず、その混乱度が一番顕著な「YES」から。

このバンドはメンバーチェンジを繰り返しながら長々と活動している。
なので、どの時点の「YES」を好きかで話題が大きく異なってくる、非常にややこしいバンドだ。

1969年 イエス・ファースト・アルバム(Yes)
1970年 時間と言葉(Time And Word)
1971年 サード・アルバム(The Yes Album)
1971年 こわれもの(Fragile)
1972年 危機(Close To The Edge)
1973年 海洋地形学の物語(Tales From Topographic Oceans)

1973年 イエスソングス(Yessongs)-Live
1974年 リレイヤー(Relayer)
1977年 究極(Going For The One)
1978年 トーマト(Tormato)
1980年 ドラマ(Drama)

1980年 イエスショウズ(Yesshows)-Live
1983年 ロンリー・ハート(90125)
1985年 9012ライブ(9012 Live : The Solos)-Live
1987年 ビッグ・ジェネレイター(Big Generator)
1991年 結晶(Union)
1994年 トーク(Talk)

1996年 キーズ・トゥ・アセンション(Keys To Ascention)-Liveとスタジオ録音がセット
1997年 キーズ・トゥ・アセンション2(Keys To Ascention 2)-Liveとスタジオ録音がセット
1997年 オープン・ユア・アイズ(Open Your Eyes)
1997年 BBCセッション1969-1970 サムシングズ・カミング(Yes BBC Sessions 1969-1970 Something's
Coming)-Live
1999年 ラダー(The Ladder)
2000年 ハウス・オブ・イエス(House Of Yes)-Live
2001年 マグニフィケイション(Magnification)
2005年 ライヴ・イヤーズ(The Word Is Live)-Live

ビデオ/DVD
1972年 イエスソングス
1975年 イエス/ライブ 1975
1979年 ライブ・イン・フィラデルフィア
1984年 9012ライブ
1991年 イエスショウズ91
1996年 キーズ・トゥ・アセンション Vol.1 / Vol.2
1999年 ハウス・オブ・イエス
2001年 シンフォニック・ライブ
2004年 Yes Acoustic

とりあえず、この15年は「昔の遺産で食ってます」状態で、ライブをしてはその様子をDVDやCDで発売し、しかもちょっとずつ「長らくライブでやってませんでした」な曲を盛り込むもんだから、かつてのファンがついついライブに行くしDVDやCDを買うし…で困ったもんなのである。
ビデオのほうは収録ライブの年代で、「9012ライブ」(スタジオ版が90125でナイン・オー・ワン・ツー・ファイブのファイブをライブにもじってるのだが…日本語にするとすごく間抜けだ)はその当時に発売されたが、それ以前のライブは90年代以降に出されている。
いかにライブ(往年の名曲)で飯を食っているかが顕著だ。
しかも「キーズ・トゥ・アセンション1・2」に至ってはスタジオ新作だと売り上げが伸びないから、昔の名曲満載のライブを二つに分けて、それぞれにスタジオ録音をカップリングするという…それでもファンは買ってしまうのである。
だから、おそらく新しいファンは増えてないだろうなぁ…
あるとしたら親父のレコードラックからきれいなジャケットのLPを見つけて「これ、何?」って聞いた息子に、遠い目をしながら親父が語りだして…

しかもこの親父の年代によっては、若者が出会うイメージも大きく変わるだろう。
私だったら「危機」を勧めるが…まず受け入れてもらえんだろうなぁ。

と、前置きだけでも長くなっちゃうのが思い入れの強さで、思い出話はまたアルバムレビューの方に任せて、プログレ論に即して。

まず、このバンドが結成されたときは「プログレ」なんてジャンルはなく、彼らもコーラスワークがきれいなロックバンドという程度だった。

で、私が彼らを「プログレバンド」として見るのは、先にも書いた「危機」というアルバムのすごさから。
プログレの要素として、「組曲的な長い曲」だとか「クラシックのような展開力」というものがあって、このアルバムはこの二つの要素がプログレ界でもBEST3に入る。

ファンには、このひとつ前の「こわれもの」が大きな転回点といわれているが、このアルバムからキーボードがリック・ウェイクマンに変わったことで、それまでのオルガン中心のシンプルなキーボードから、クラシック畑の荘厳なキーボードに変わったという事が大きい。
しかし、「こわれもの」の時点ではまだ手探り状態だった「ドラマティック」な部分が完成されたのが「危機」だと思う。

その「こわれもの」以前は1st「YES」、2nd「時間と言葉」がちょっとアーチスティックなロックで、ギターがスティーヴ・ハウに代わった「サードアルバム」からプログレっぽさが現れた。
それが「危機」につながったといえる。

メンバーで言うと
ジョン・アンダーソン - Jon Anderson(vo)
クリス・スクワイア - Chris Squire(b/vo)
ビル・ブラッフォード - Bill Bruford(ds)
スティーヴ・ハウ - Steve Howe(g/vo)
リック・ウェイクマン - Rick Wakeman(key)

が最高のラインアップだと。

だから、私にとってプログレバンド「YES」は、このメンバーの「危機」である。

ところがこのアルバムの後、ドラムのビル・ブラッフォードが抜けてアラン・ホワイトに代わった。
実はこのラインナップが再結成も含めると一番長く活動していて、いわゆる黄金ラインナップになっている。
(でも、私はそうは思わない)
ビル脱退後に「海洋地形学の物語」というアルバムを発表し、アルバムランキングで1位になるが、それはおそらく「危機」を聞いて次を期待したファンによる購買が現れているだろうし、なによりこのアルバムはドラムが変わったことで、雰囲気こそ「危機」を引き継いでいるものの、あの緊張感がなく、かなり冗長になっている。
いや、このアルバムもプログレ要素満載でいいアルバムだが、私としてはどうしても「危機」と比べてしまう。

次にキーボードがパトリック・モラーツに代わって「リレイヤー」というアルバムを発表する。
私としてはこのアルバムは「危機」に次ぐ名作だと思っている。
ただし、キーボードが代わったことで、「危機」の「YES」とは違うバンドとして認識してる。
大袈裟な荘厳さがあるリックに対して、とてもきらびやかな音作りであり、そのプレイもゆったりした荘厳さとは対照的な緊張感高まるものである。
似ていて非なるもの…
もし、このラインアップで後もアルバムを作り続けていたら、こちらが「YES」の本流になったかもしれない。
しかし、この一枚でまたキーボードがリックに戻ってしまった。

ここから大いなる迷走が始まる。
いわゆる黄金ラインアップに戻ったのだが、その後のアルバム「究極」「トーマト」は部分的に全盛期を思わせるところもあるが、やはり2番煎じになってしまっている。
POPさに擦り寄っている感じがあるのだ。

そしてついにボーカルが代わるという事態を迎える。
ボーカルにトレヴァー・ホーン、キーボードにジェフリー・ダウンズ という「バグルス」というバンドを吸収した形の「YES」が出来上がってしまった。
アルバム「ドラマ」は、個人的には好きなアルバムで、ベースのクリスは水を得た魚のようにのびのびとプレイしている。
もしこれが「YES」という名前でなければ…
「YES」の幻想を持っているファンには受け入れられなかったのも当然で(ライブブートレッグで演奏しているジョン時代のナンバーはかわいそうになってくる)ここで一旦「YES」の歴史は閉じた…ように思われた。
ちょうど80年代を迎えて、音楽を取り巻く環境が「商業主義」に支配されだした頃だ。
(もっとも、それ以前にパンク・ムーブメントによって、ロックは死んだと言われていたのだが…)

<つづく>


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November 14, 2009

プログレの深い森 その1 どこから手をつける?

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プログレというものを語るのは、地雷原に足を踏み入れるに等しい。
”我こそは”というプログレ好きが、それこそ100人いたら100通りのプログレ観があるから。

 

しかも、80年代以降の世代にはとっくに進歩的でも革新的でもない過去の遺物になっている(プログレッシブ【progressive】とは進歩的・革新的の意)

 

でも、誰がなんと言おうとプログレが好きなんだぁ~

 

といういことで、今までいろいろなアーチスト・アルバムを紹介してきたけれど、70年代プログレをリスペクトしている「Transatlantic」を分析しているときに、懐かしい気持ちと共に一度プログレ四方山話をまとめてみたいなと。
ただ、世間ではひとくくりのプログレ界も、いわゆるメジャーバンドから、ユーロ系、カンタベリー系、イタリアンにジャーマンにアメリカンと、それぞれにマニアがいたりして…

 

そこまで手を広げるとろくなことにならないので、とりあえず4大バンドあたりを検証してみようかなと。
(ところがどのバンドを4大にするかで、これまたもめるんだ)

 

で、同じプログレとくくっても、この4大バンドだけでも全然別の音楽だったりする。
要は売り手側のカテゴリーであって、本人らはあまりこのジャンルを気にしてないらしい。
また、同じバンドでも時期によってやってる方向性がいろいろあったりもするし…

 

かように、プログレを語るのはとても困難なことであります。
一挙に続けるか、しばらくのスパンをかけるかはわかりませんが、とりあえずやってみましょう。
できれば短期集中で…

 

YESの場合 

Pink Floydの場合 

King Crimsonの場合 12

Genesisの場合 12

 

 

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November 13, 2009

Transatrantic「The Whirlwind」

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久々に新譜の紹介

このバンドのことはぜんぜん知らなかったんだけど、ネットでプログレ好きの知人が話題にしてたんで聞いてみた。
曰く「昔の長尺プログレ好きなら気に入りますよ」ってことだったので。

パーマネントバンドではなく、Dream Theaterのドラマー、マイク・ポートノイなどの凄腕ミュージシャンが集まってできたグループで、2000年に1st、翌年に2ndアルバムを出し、2009年になってこの3rdアルバムを発表。
デビュー作では33分の曲から始まると言う”一般的に”度肝を抜くアルバム作りだったが、今回はCD丸々1曲(77分)という…

Dream TheaterでもPink Floydの「狂気」をまるまるカバーするオフィシャル・ブートレグ作ったりしてるし、YESのカバーなんかもしてるくらいなんで、70年代プログレへのオマージュはあるだろうけど、このアルバムにも70年代プログレのエッセンスがばっちり。
プログレ好きおじさんとしては”にやり”とするような場面があちこちに。

基本的にYESのような「わかりやすいメロディ」を組み合わせた組曲形式で、ベースなんかクリス・スクワイヤのようなゴリゴリフレーズが多用されてる。
あとギターをナチュラル・トーンにしてシンセと掛け合いするあたりはスティーブ・ハウとリック・ウェイクマンを思い起こさせる。

ブルージーに泣きのギターを入れるところや、ベースをループッぽくぐるぐる回しながらオルガンをかぶせるところはPink Floyd。

シンセソロでぐいぐい押すところはキース・エマーソンだし。

ちょっとマイナー調で格式ばってる展開するところはジェネシスも入ってる。
あと、ちょっとだけ戯曲っぽいパートもあったり。
(ちょっとむりやりGenesisっぽくしてる感も…)

中盤のトラック7あたりの疾走感は「危機」の「Close To The Edge」の緊張感そのもの。
また後半、盛り上がるところの静かな展開は、トレバー・ラビン時代のYESの「Talk」みたいだし、その後のメロディの合間にドラムのアクセント入れる仕上げは「危機」の「And You And I」のリズム感そのもの。
やはりドラマティックなYESの世界が一番底辺にあるんだろうな。

ただ、悲しいかなボーカルはアメリカン・ハードな粘っこい歌い方。
それも80年代メタルのRATTやNight Rangerみたいなやつ。

あと、ドラムは70年代プログレの誰もできないような大迫力で、本家のDream Theaterのときよりは押さえているものの、枠をはみ出してる感じ。
マイク・ポートノイって今一番すごいドラマーかもしれない。

曲名は「Whirlwind」(扇風)1曲だけど、クレジットとしては12曲の組曲仕立て。

とこうやって70年代プログレの雄と比べてみたりするけど、King Crimsonが見当たらない。
まぁ強いてあげるならマイク・ポートノイの自由さは、King Crimson時代のビル・ブラッフォードに近い…(これもお互い別のよさがあるから比べるものじゃないけどね)

この辺から「プログレ」と一くくりにされているけれど、決して他と相容れない独自の世界観を持ってる70年代プログレを考えてみても面白いなと。

ということで、気まぐれで聞いたことないバンドを試してみたくなった方は(特に70年代プログレ好き)は御一聴を。

カルト度90% おそらく普通にヒットチャートなんかみてても知ることはないだろうなと…

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November 12, 2009

Simply Red「New Flame」

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Simply Redとの出会いは、この時期全盛を迎えたMTV系のPV放映プログラムだったと思う。
その当時はブリティッシュ・インヴェイションのきらびやかなブームが一段落し、スタイル・カウンシルやワム!のようなソウルをUK的に取り込んだブルー・アイド・ソウルがおしゃれな連中を生み出していた。
そんな中「Holding Back The Years」という傑作ナンバーを聞いたとき、新人とは思えぬ非凡な歌唱力とメロディに心惹かれていた。

その後、各アルバムを聞いているが、このアルバムにはちょっと特別な思いが…
といっても至極私的な思いだが、結婚式の入場シーンにこのアルバムの名曲「If You Don't Know Me By Now」を採用したのだ。
彼らのオリジナルではなくカバー曲であったり、実は「ギリギリ分かれる瀬戸際」の歌だったりするけれど(歌詞はこちらで)、曲の雰囲気や、一歩一歩踏みしめて歩いていく感じが、当時は「この曲しかないな」と。
この11月11日にその日から20年目と言う節目が…

ということで、記念もこめてこのアルバムをレビューします。

「It's Only Love」ミューとしたトランペットから始まるジャジーなサウンド、ベースラインはチョップを盛り込んだ典型的なソウルナンバー。
もともと黒っぽいミック・ハックネルの歌声はバッチリとなじんでいる。
この一曲でアルバムの方向性が決まってしまう。

「A New Flame」アルバムタイトルにもなった、アダルトオリエンタルなロック。
粘っこく、伸びるミックの歌声が満喫できる。

「You've Got It」ソウルフルなスローバラード。
70年代のAORを思わせるが、ちょっと他の曲に比べると個性が弱いかな

「To Be with You」
「More」ちょっとレゲエリズムも盛り込んだナンバー。
いまいち盛り上がりに欠ける。

「Turn It Up」ちょっとファンキーなアップテンポなナンバー。
ここまでがちょっと中だるみ気味だったんで、このアップテンポへの転換はなかなかおしゃれな感じ。

「Love Lays Its Tune」再びスローなラブソング。
まぁ十分に甘ったるい雰囲気です。

「She'll Have to Go」ちょっとアップテンポなナンバー。
シンセの具合とドラムの処理がいかにも80年代のちょっと残念な音だけど…まぁ、当時はこういう音がかっこよかったんです。

「If You Don't Know Me by Now」音数は少なく、簡潔な演奏にソウルフルな歌声が乗っかってるだけ。
なのに、これだけの深みを感じるのは何故だろう。
やはりミックの歌声、その揺らぎが余韻となって響き続けるからだろう。
もう完璧なスタンダード。
カバー曲だけれど、Simply Redの最高傑作といって良い。

「Enough」ラストを締めるちょっとマイナーなナンバー。
前曲で終わってもいいかなって気もするが、ちょっとクールダウンって感じで、ジャジーに最後を締めている。

1曲1曲でいくとちょっと物足りないナンバーもあるけれど、1曲目からこの曲までを貫く、ソウル・ファンキー・ジャジーな雰囲気は、大人の世界を形づくっていて、今でも十分に聞くに堪える。

定番度 75%  ちょっとアダルトなロックをお求めなら、ワインと一緒にこのアルバムを


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