プログレの深い森 その2 YESの場合-1
ではまず、その混乱度が一番顕著な「YES」から。
このバンドはメンバーチェンジを繰り返しながら長々と活動している。
なので、どの時点の「YES」を好きかで話題が大きく異なってくる、非常にややこしいバンドだ。
1969年 イエス・ファースト・アルバム(Yes)
1970年 時間と言葉(Time And Word)
1971年 サード・アルバム(The Yes Album)
1971年 こわれもの(Fragile)
1972年 危機(Close To The Edge)
1973年 海洋地形学の物語(Tales From Topographic Oceans)
1973年 イエスソングス(Yessongs)-Live
1974年 リレイヤー(Relayer)
1977年 究極(Going For The One)
1978年 トーマト(Tormato)
1980年 ドラマ(Drama)
1980年 イエスショウズ(Yesshows)-Live
1983年 ロンリー・ハート(90125)
1985年 9012ライブ(9012 Live : The Solos)-Live
1987年 ビッグ・ジェネレイター(Big Generator)
1991年 結晶(Union)
1994年 トーク(Talk)
1996年 キーズ・トゥ・アセンション(Keys To Ascention)-Liveとスタジオ録音がセット
1997年 キーズ・トゥ・アセンション2(Keys To Ascention 2)-Liveとスタジオ録音がセット
1997年 オープン・ユア・アイズ(Open Your Eyes)
1997年 BBCセッション1969-1970 サムシングズ・カミング(Yes BBC Sessions 1969-1970 Something's
Coming)-Live
1999年 ラダー(The Ladder)
2000年 ハウス・オブ・イエス(House Of Yes)-Live
2001年 マグニフィケイション(Magnification)
2005年 ライヴ・イヤーズ(The Word Is Live)-Live
ビデオ/DVD
1972年 イエスソングス
1975年 イエス/ライブ 1975
1979年 ライブ・イン・フィラデルフィア
1984年 9012ライブ
1991年 イエスショウズ91
1996年 キーズ・トゥ・アセンション Vol.1 / Vol.2
1999年 ハウス・オブ・イエス
2001年 シンフォニック・ライブ
2004年 Yes Acoustic
とりあえず、この15年は「昔の遺産で食ってます」状態で、ライブをしてはその様子をDVDやCDで発売し、しかもちょっとずつ「長らくライブでやってませんでした」な曲を盛り込むもんだから、かつてのファンがついついライブに行くしDVDやCDを買うし…で困ったもんなのである。
ビデオのほうは収録ライブの年代で、「9012ライブ」(スタジオ版が90125でナイン・オー・ワン・ツー・ファイブのファイブをライブにもじってるのだが…日本語にするとすごく間抜けだ)はその当時に発売されたが、それ以前のライブは90年代以降に出されている。
いかにライブ(往年の名曲)で飯を食っているかが顕著だ。
しかも「キーズ・トゥ・アセンション1・2」に至ってはスタジオ新作だと売り上げが伸びないから、昔の名曲満載のライブを二つに分けて、それぞれにスタジオ録音をカップリングするという…それでもファンは買ってしまうのである。
だから、おそらく新しいファンは増えてないだろうなぁ…
あるとしたら親父のレコードラックからきれいなジャケットのLPを見つけて「これ、何?」って聞いた息子に、遠い目をしながら親父が語りだして…
しかもこの親父の年代によっては、若者が出会うイメージも大きく変わるだろう。
私だったら「危機」を勧めるが…まず受け入れてもらえんだろうなぁ。
と、前置きだけでも長くなっちゃうのが思い入れの強さで、思い出話はまたアルバムレビューの方に任せて、プログレ論に即して。
まず、このバンドが結成されたときは「プログレ」なんてジャンルはなく、彼らもコーラスワークがきれいなロックバンドという程度だった。
で、私が彼らを「プログレバンド」として見るのは、先にも書いた「危機」というアルバムのすごさから。
プログレの要素として、「組曲的な長い曲」だとか「クラシックのような展開力」というものがあって、このアルバムはこの二つの要素がプログレ界でもBEST3に入る。
ファンには、このひとつ前の「こわれもの」が大きな転回点といわれているが、このアルバムからキーボードがリック・ウェイクマンに変わったことで、それまでのオルガン中心のシンプルなキーボードから、クラシック畑の荘厳なキーボードに変わったという事が大きい。
しかし、「こわれもの」の時点ではまだ手探り状態だった「ドラマティック」な部分が完成されたのが「危機」だと思う。
その「こわれもの」以前は1st「YES」、2nd「時間と言葉」がちょっとアーチスティックなロックで、ギターがスティーヴ・ハウに代わった「サードアルバム」からプログレっぽさが現れた。
それが「危機」につながったといえる。
メンバーで言うと
ジョン・アンダーソン - Jon Anderson(vo)
クリス・スクワイア - Chris Squire(b/vo)
ビル・ブラッフォード - Bill Bruford(ds)
スティーヴ・ハウ - Steve Howe(g/vo)
リック・ウェイクマン - Rick Wakeman(key)
が最高のラインアップだと。
だから、私にとってプログレバンド「YES」は、このメンバーの「危機」である。
ところがこのアルバムの後、ドラムのビル・ブラッフォードが抜けてアラン・ホワイトに代わった。
実はこのラインナップが再結成も含めると一番長く活動していて、いわゆる黄金ラインナップになっている。
(でも、私はそうは思わない)
ビル脱退後に「海洋地形学の物語」というアルバムを発表し、アルバムランキングで1位になるが、それはおそらく「危機」を聞いて次を期待したファンによる購買が現れているだろうし、なによりこのアルバムはドラムが変わったことで、雰囲気こそ「危機」を引き継いでいるものの、あの緊張感がなく、かなり冗長になっている。
いや、このアルバムもプログレ要素満載でいいアルバムだが、私としてはどうしても「危機」と比べてしまう。
次にキーボードがパトリック・モラーツに代わって「リレイヤー」というアルバムを発表する。
私としてはこのアルバムは「危機」に次ぐ名作だと思っている。
ただし、キーボードが代わったことで、「危機」の「YES」とは違うバンドとして認識してる。
大袈裟な荘厳さがあるリックに対して、とてもきらびやかな音作りであり、そのプレイもゆったりした荘厳さとは対照的な緊張感高まるものである。
似ていて非なるもの…
もし、このラインアップで後もアルバムを作り続けていたら、こちらが「YES」の本流になったかもしれない。
しかし、この一枚でまたキーボードがリックに戻ってしまった。
ここから大いなる迷走が始まる。
いわゆる黄金ラインアップに戻ったのだが、その後のアルバム「究極」「トーマト」は部分的に全盛期を思わせるところもあるが、やはり2番煎じになってしまっている。
POPさに擦り寄っている感じがあるのだ。
そしてついにボーカルが代わるという事態を迎える。
ボーカルにトレヴァー・ホーン、キーボードにジェフリー・ダウンズ という「バグルス」というバンドを吸収した形の「YES」が出来上がってしまった。
アルバム「ドラマ」は、個人的には好きなアルバムで、ベースのクリスは水を得た魚のようにのびのびとプレイしている。
もしこれが「YES」という名前でなければ…
「YES」の幻想を持っているファンには受け入れられなかったのも当然で(ライブブートレッグで演奏しているジョン時代のナンバーはかわいそうになってくる)ここで一旦「YES」の歴史は閉じた…ように思われた。
ちょうど80年代を迎えて、音楽を取り巻く環境が「商業主義」に支配されだした頃だ。
(もっとも、それ以前にパンク・ムーブメントによって、ロックは死んだと言われていたのだが…)
<つづく>
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Comments
すみません、トラバする記事を間違えてしまいました。再度飛ばします。
Posted by: kiyo | November 18, 2009 08:51 AM
「kiyo」さま、どーもです。
いつもありがとうございます。
マリリン・マンソン…ちょうどこの記事と同じ頃に、別のブログ「真宗とカウンセリング」
http://blog.goo.ne.jp/buddist18/e/5310aed349323b1ec778c48dee5f12d4
にてマリリン・マンソンのことを書いてました。
なんか、不思議な縁がつながっているなと感じてます。
ということで、「kiyo」さまがおいやでなければ、このままトラバを残しておくのもいいなと思ってます。
Posted by: MANU. | November 18, 2009 04:23 PM