ライブレビュー「キツネの嫁入り」 再び
久しぶりに「キツネの嫁入り」のライブ日程と私の都合が合って聞きに行くことができた。
はじめて彼らとであった三条木屋町の「Urbanguild」前に行ったときも入り口がわからず、何度か前を行ったりきたりしてたのだが、今回も飲み会の若者が看板を隠すようにたむろしていたせいで見逃して行き過ぎてしまった。
その前の予定の関係もあって開演からだいぶ時間がたっていた。
入り口を入ると、ボーカルの「マドナシ」さんが迎えてくれ、ちょっと言葉を交わしてから会場へ。
「勝野タカシ」さんのライブ中だった。
アコギの弾き語りで、ギターの音がウクレレのように軽いんだけど、それがネオアコのムーブメントを思い起こさせる、POPでエネルギッシュな音。
ねばっこい歌でありながら、そのメリハリで音が踊っている。
また聞いてみたいと思った。
続いて「キツネの嫁入り」
「忘却」何回かライブで聞かせてもらったこの曲がオープニング。
耳慣れているせいもあって、とても落ち着くし、いつもの「キツネの嫁入り」の世界にすんなり入れる。
「世界の逆」こちらも7月のライブでも聞いた曲。
変拍子も心地よく、「カギ」さんのジャンベが活躍するアップテンポナンバー。
音の出入りも絶妙で、バランスもこなれている感じで安心して聞ける。
「群をなす」これも7月に聞いた曲。
「ひーちゃん」さんの木琴は、前回聞いたときより「なじんでいる」感じがして、自然に聞いていた。
アコーディオンがないことによる音のスキマを前回は感じていたけど、ギターやジャンベがうまい具合にバランスをとってたからかな。
「白黒」引き続き木琴中心のイントロで、ギターもちょっとパーカッシブな使われ方。
アコーディオンのときは静かに揺れながら弾いている「ひーちゃん」さんだけど、前後左右に踊りながら木琴をたたく様は素敵だ(惚れ直してしまった)
しかし、この曲は音のことよりも「詩」が響いてきた。
とかく「白黒」つけたがることに対して、「グレー」が主張する。
そう、グレーっていうのもありだし、グレーでいることを認めるってのはすごく大事なこと。
理想だけに目を向けるのでもなく、「今、ここ、わたし」の状態をそのまま認めて受け入れるということは、「白・黒」つけられないことをも受け入れていくこと。
「キツネの嫁入り」さんって、詩がしっかり届いてくるから素敵だ。
「雨の声」はじめて聞く曲で、ゆらゆらとたゆたう世界に浸らせてくれる。
全編にわたって「雨の音しとしと 人の音たわたわ」と歌い続ける「ひーちゃん」さんの声も素敵だし、ひたすら繰り返されることでミニマルミュージックの世界に酔っていける。
何故だか判らないけど、「Doors」の「The End」を聞いているときのような高揚感と浮遊感を感じていた。
「カラマワリ」ハンドクラップでリズムを取りながら、パーカッシブなギターとねばっこいアコーディオンがからんでいる。
コーラスもメロディよりもリズム楽器の役割をして、アラビアンやエスニックの入り混じった不思議なグルーブを作り出している。
新しく聞くこの3曲にはとてもリズムを感じる。
すでにあるものにリズムを加えるのではなく、リズムありきで練り上げられていったんじゃないかと思える。
「最後の朝焼け」ライブでも聞いているし、音源でも何度も聞いている曲。
しかし、そこにプラスアルファを感じてしまうのは、ボーカルの「マドナシ」さんに起こった出来事を聞いていて、私のほうが勝手にその出来事を組み込んで聞いてしまっているからか。
音楽を聞くときに、そこで奏でられているものをそのまま聞くのが普通だと思っている。
しかし、人は頭が働いているかぎり、刹那刹那にめぐってくる思いを脳内で混ぜてしまう。
それは発信者がそうしていなくても、勝手にこちらが発信者に装飾してしまうもので、その時点で”私”の思いだ。
「発信者に思いがある」と勝手に想像して、受け取った気でいるが、そうじゃない、こちらの創造物だ。
でも、それを無理やり引き剥がそうとしては、それもまたその刹那の音楽でなくなる。
勝手に想像し創造したものをも含めて、その刹那のリアルなものとして聞いていた。
その結果は…この歌が聴けてよかった。
「キツネの嫁入り」のあとは「石橋英子」さん。
非常に感想を言葉にしずらいのだが…
簡単にいうと「私には合わない」と思った。
ただその言葉だけでは全部を言い表せていない。
その「歌」をもっと聴きたいと思わせるものだった。
かなり自由な演奏のなかに、時折現れる「歌」は素敵だった。
チェロの「音」が組み合わさる瞬間も素敵だった。
しかし、インプロ的に展開される「音」の荒波はきつかった。
ここが微妙なところで、全否定ではなく、昨日の組み合わせで生まれるものが私には合わなかったということで…
そう、違う形で聞いてみたいと思えるのが不思議だ。
振り返ってみると、70年代King Crimsonのライブアルバムを聞いたときに似たようなことを感じたのを思い出した。
ただ、それは最初は即興でもアルバムという形で繰り返し聞くことができるので、即興から「できあがったもの」として聞きなおすことができた。
もしかしたら、昨日の音も繰り返し聞いたら違った印象になるのかもしれない。
(噂に聞いていた「火を噴くチェロ」が見れたのは満足だ)
と、なんだかんだ好き放題書いているけど、結局「キツネの嫁入り」と再び出会えたことがうれしい。
それも、今までとまた違う顔の。
何度か出向いたライブで、それこそいろんなタイプのバンドも一緒に聞いてきたけど、そのきっかけが「キツネの嫁入り」だったというめぐり合わせはもう奇跡に近いものだと思う。
キツネの嫁入りサイト
別の時のものですが、YouTubeに曲が上がってます。
忘却
カラマワリ
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