Joe Jackson「Body & Soul」
先日、東京へ車で移動するために、いつものMP3プレーヤーを持っていこうとしたら見当たらなかった。
そこで、急遽何枚かのCDを持っていくことにしたのだが、パソコンに入れて普段聞けるようにMP3化していないものをあえて選んでみた。
そうすると、80年代のAOR系を最近聞いてなかったことに気づく。
AORとは「アダルト・オリエンテッド・ロック」のことで、ロックの流れを持ったミュージシャンが、大人向けの大人しめのアルバムを作っていたもの。
70年代にイーグルスが「ホテル・カリフォルニア」を、フリートウッドマックが「噂」をメガヒットさせたあたりから、そういう新しいロックが生まれたように思う。
私自身は、クリストファー・クロス、ケニー・ロギンス、マイケル・マクドナルド、ボズ・スキャッグスあたりのLPを買いあさっていた時期でもある。
ただ、この流れはUSAチャートのものだと思っていた。
Joe Jacksonもそんなころ、「Steppin' Out」などのおしゃれな曲のPVを流していた。
Joe JacksonはUK生まれのミュージシャン。
ただ、このアルバム前後の全盛期は、NYジャズとの融合を果たしたようなおしゃれなイメージで、ビリー・ジョエルやクリストファー・クロスなどと近い雰囲気があったりもする。
実際、私もUSAのミュージシャンだと思ってた。
「Verdict」オープニングのホーンセクションと力強いドラムのインパクトが抜群。
このフレーズは、TV番組「Best Hit USA」の途中にあるタイヤCMで使われていた。
そのインパクトフレーズと、ボーカルバックでのピアノの静かなフレーズ、この繰り返しが高揚感をかき立てる。
「Cha Cha Loco」一転してジャジーなナンバー。
ラテンタッチのパーカッシブともマッチして、おしゃれな雰囲気
「Not Here, Not Now」ピアノバラード。
静かな曲調からサビに向けて盛り上がっていく感じは力強く、AOR系のバラードとは一線を画している。
「You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want)」文句なしにかっこいい、キラーチューン。
ギターの感じがAOR的な軽いものであったり、ベースがチョッピングでグルーブしてたり、ホーンセクションがジャジーだったり、サビがモータウン的だったり…そんないろんな要素が抜群のバランスの上で”踊っている”
歪ませるだけがロックじゃない、シャウトするだけがロックじゃない。
「Go for It」ビートの聞いたサウンドは前曲からさらにノリノリで、気分は盛り上がってくる。
この4・5曲目の流れは最高だ。
「Loisaida」ピアノインストナンバー。
この後に、映画のサントラなども多く手がけるジョーだが、この曲でも情景が浮かぶようなきれいなメロディを聞かせてくれる。
その情景は…やっぱNYなんだけどねぇ。
「Happy Ending」女性ボーカル(ソウルフルなシンガーだ)とのデゥエット曲。
男女デゥエットなんて演歌しかないと思っていたのだが…(笑)
これがまた非常に良い。
ホーンの使い方もいいし、ベースのグルーブ具合も絶妙だ。
予断だが、学生時代に一緒のサークルでやってたバンドがこの曲を採用していた。
そのボーカリストとはあまりなじんでなかったのだが、この曲を歌いこなすセンスには脱帽していた。
「Be My Number Two」再び静かなバラード。
静かに終わると思いきや、最後にホーンセクションが盛り上げてくれる。
「Heart of Ice」ハイハットを刻む静かな音、そこに木管楽器(クラリネットかフルート)が加わってくる。
次にミュートをきかせたトランペットが加わり、さびのメロディにつながる。
やがてピアノが加わり、ドラムがビートを刻みだす。
サックスが、ベースが加わり、主題以外の音も増えてくる。
ついにはエレキギターやシンセが音を重ねだし、盛り上がってくる…
そう、この展開はラベルの「ボレロ」やマイク・オールドフィールドの「チューブラベルズ」を思い起こさせる。
でもそんなに大層な作品でなく、アルバムラストのほんの一曲として持ってくるところがおしゃれだ。
曲はやがてボーカルとコーラスが加わり、主題を繰り返す。
気がついたら、ほんの6分ほどの曲。
印象は20分くらいの大作を聞いたような感じだ。
いや、お見事。
定番度 85% 古いけれど聞く価値はあり
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