ライブレビュー「キツネの嫁入り」
CDからMP3に変換して聞いていたパソコンがトラぶり、レビューするために音楽を聴くことに困っている。
だもんで、なかなかアルバムレビューができない。
そんなときに、ライブを見に行ったので、その報告を…
たまに懐かしのアーチストのコンサートに行く以外、なかなかライブスポットに行くことがなくなっていたが、ふとしたきっかけで知り合ったバンドのイベントを何度か聞きに言っている。
それが「キツネの嫁入り」
まったく音楽とは違う縁で知り合ったのだが、次第にマドナシさんの言葉の世界に惹かれて行き、初めてその音に触れたときに同調する何かを感じた。
活動的な彼らのライブ、毎回お誘いいただくのだが、数ヶ月に一度くらいしか訪ねることができない。
この日は、京都のラジオ局主催の野外イベントで、無料。
子どもに生のライブを体感させたい気持ちもあったので、休日を家族で楽しんだ。
「キツネの嫁入り」の音は言葉で表現し辛い。
そこをあえて言葉にすると、デジタルビートのようなミニマルフレーズを生楽器で演じながら、生身に訴える暖かい音(ヒーリングともいえる)に、ほんのり薄ら寒くなるシニカルな言葉を載せて、体のどこかに緊張感を与えるという、おとぎ話のような世界。
それもプログレバンドがやるような西洋的なおとぎ話でなく、日本の民話から飛び出してくるような霧のかかった世界。
シガーロスの音に谷山浩子の詩が乗っているような…
うーん、ぜんぜん伝えられんね。
「忘却」 アコーディオンの揺らぎとアコギのミニマルフレーズ、そして軽めのパーカッション。
そう、パーカッションがブレイクしたときに聞こえるアコギの音がアクセントになることで、逆にそれまでのパーカッションの存在が浮き彫りになる。
それくらい、本来アタックが強いパーカッションが、アコーディオンとアコギに溶け込んでいる。
バチけいを使わないジャンベならではの、メリハリをつけつつ優しい音なんだろう。
低音がしっかり身体に圧をかけてきたのは、難しい野外なのにしっかりマイクセッティングされている感じで、心地よかった。
そして、フロントに出てくるマドナシさんの声がなにより”空間”を作り出している。
ひーちゃんさんのコーラスも相変わらず素敵。
(一度彼女がメインボーカルの曲を聞いてみたいものだ)
「世界の逆」 カーニバルチックなアコーディオンに、パーカッションとアコギがかぶさってくる。
やがてファンキーなアコギが前に出てきて歌に入る。
そして私が大好きな”おいしい”変拍子のアクセント。
ひたすら変拍子をいれる、ブイブイ系のテクニシャンズも嫌いではないが、こういう風にアクセントでさりげなく入れるのがなんともおしゃれだ。
カギさん足元のフットペダルは、シンセパッドでもついてるんだろうかと思ってたら、カウベルだった。
こういう使い方…もしかしたら別に珍しくないのかもしれないけど、私は知らなかった。
一緒に言った小学生の息子は、この曲のジャンベが一番印象に残っていたようだ。
いわく「すごく早いのがかっこいい。手が見えない」と。
「群れをなす」はじめて聞く曲(だと思う)
ひーちゃんがアコーディオンからマリンバに変わり、ちょっと違う雰囲気へ。
いつもアコーディオンが音の隙間を埋めているけど、マリンバはアタック系だし、トレモロをいれてもアコーディオンの底の方まで響く重圧感はでない。
ギターもパーカッションも控えめだったから、他の曲より歌が前に出てくる。
そのマリンバの高音の響きが、緊張感をあたえてくれる。
こういう「キツネの嫁入り」もあるんだな、と。
マリンバってチューニングできない(と思う)から、アコギと微妙にチューニングずれている感じが、逆に「緊張の中の揺らぎ」になってて面白い。
緊張感持ちながらも、身体が揺らされている…やられた。
「最後のアサヤケ」アコギ低音のビートでRockっぽく始まる。
でも、アコーディオンが入ってくるとふわっっとした世界に変わる…うーん、Sigur Rossみたいだ。
カギさんのジャンベもいつの間にか加わってる。
いやぁ、この世界に引き込まれていて、包み込まれている感じが好きだ。
やっぱ、このアコーディオンとアコギとジャンベ、そしてマドナシさんとひーちゃんさんの声質が、低い所から高いところまで、重なるところからスカスカのところまで、こう満ちている感じが「キツネの嫁入り」スタンダードなんだろうなと。
こういうスタンダードがあるから、ところどころに「ずらした」ものが入ったときに、スタンダードも、ノンスタンダードも”あり”と思わしてもらえるんだろうな。
「箱庭」一番最初に「キツネの嫁入り」を聴きに行ったときからのお気に入り。
今回はセットにあるマリンバをイントロのアクセントに使い、ちょっと「ずらし」てきた。
アコギとアコーディオンがブレークして、ジャンベだけ…と思いきやちゃっかりマリンバが加わってる。
そう、大きく変わらないけど、ちょっとだけ「違う」ものがはいるだけで、脳内のスタンダードとのずれが勝手に幅を作ってくる。
いやぁ、ライブは生き物だし、生ものだなと。
「答えとして」アコギだけのイントロ…なんかブルージィーだと思ってたら、マリンバが加わる。
そう、ネット音源で聴いたときは、アコーディオン・アコギ・ジャンベの「キツネの嫁入り」スタンダードだった。
2コーラス目(?)からはアコーディオンとジャンベのスタンダード風になったけど、最初に印象づいた分アコギが前に出てる感覚。
サビでの高音ひーちゃんさん、低音カギさんのコーラスが何気に好きだったりする。
演奏後の司会者とのやり取りで「ジャンルは何ですか?」の問いに「Rockです」と即答するマドナシさん…
そう、私も「これはRock」だと思ってる。
何もアンプで増幅した大音量がRockだったり、圧倒するようなサウンドがRockだったりするわけじゃない。
静かに淡々と歌いながら、時折殻を破って飛び出す詩に込められた”毒”のような、内面からほとばしるエネルギーがRockなんだと。
キツネの嫁入り ライブ at 新風館 - MP3
他のライブですが、公式音源はこちらから
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Comments
えーっと
びっくりしたと同時に
うれしすぎたので思わずレスなぞ。
お子さんと一緒に来られている人が
いるなーと思いつつ。
空見てると気分がよくなって
ぼさーっとしていて
きがつきませんでした。。
丁寧なライブレビューありがとうございます!
こういった経験
あまりなれないもので純粋にうれしいです。
またゆっくりお話したいですねぇ
ではでは
マドナシ
Posted by: マドナシ | August 05, 2008 02:50 PM
「マドナシ」さん、よーこそです。
あ、びっくりされました?なんかこちらも恥ずかしい感じです。
どうしても、こういったレビューってのは、自分の脳内できらめいているのを陳腐な言葉にする作業のようで、まぁ自己満足の世界だったりするのですが、実際にその音を聞いたときの印象と、こうして振り返ったときの印象が交じり合って、記憶ってものができるんだなと、こういう陳腐な言葉も「これもわたし」と大事にしてたりします。
ただ、あくまでひとつの断面でして、これで興味を持った人はぜひ自分で体験してほしいなと。
(このレビューが逆に邪魔しちゃうと困っちゃうんですが)
でも、こうして表現者さんからお礼を言われたりすると、またまたうれしくなってきます。
ぜひ一度、ゆっくりと。
ありがとうございました。
Posted by: MANU. | August 06, 2008 11:10 PM