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July 10, 2008

Yes「Drama」

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このアルバムをYesとして紹介するのは気持ち的に微妙だったりする。
まず先に書いておくと、アルバムとしてこの「Drama」は好きだ。

まだMTVもない時代に、夜中にやっていたROCKの番組をビデオに録画して何度も見た。
ハードロックを中心にUKロックを特集した番組だが、そのときにYESとして紹介されたのがこのアルバムの「Tempus Fugit」だった。
音楽雑誌で写真を見たことはあっても、動く映像などBeatles以外知らなかった時代だし、そこに映っているのが「YES」だと…
また、その音楽は非常にかっこよく、幻想的な映像とマッチしていた。

しかし、後にディスコグラフィーなどにも興味を持ってバンドを追っかけだすと、このアルバムが特殊だったことがわかる。

メンバーの激しい入れ替わりがありながらも「YES」名義で活動してきた(まだ活動している)バンドだが、唯一このアルバムはボーカリストが違うのだ。

前作「Tormato」の後にボーカルのジョンとキーボードのリックが脱退し、すでに自ら「ラジオスターの悲劇」というヒット曲を出している「バグルス」のトレバー・ホーンとジェフ・ダウンズを迎え入れて作られた。

作品自体は前2作のようにコンパクトな曲が中心で、新加入の二人の影響なのか、あるいはメンバーが変わった危機感からか、各パートが抑え目で、その分バランスやアンサンブルが重視されている。
ギターのスティーブも「常に全開」状態だったのが、ベースとのユニゾンを大事にしたり、ストロークでのリズムプレイを大事にしたり、ソロになるとしっかり自己主張したりと、メリハリが感じられる。

後の名プロデューサーとなる、トレバー・ホーンの味が出ているのかもしれない。

しかし、やはりジョンのいない「YES」は認めたくないということか、ツアーなどの評判は良くなかった。
最初から高いハードルをつけられたもんだから、損をしたユニットだろう。
(ジョンがいるだけで、このアルバムよりYESらしくない「90125」の方が評価されてしまうのだから…)

このアルバムでよくも悪くも前進し続けた「YES」は完全に幕をひいた。
これ以降は「YES」という名の別バンドであったり、過去を懐かしんで集まった同窓会バンドでしかない。


「Machine Messiah」重いアンサンブルがイントロのミドルテンポの曲。
その重さで重厚感を出そうとしているのだが、雰囲気が重いだけでうすっぺらい。

「White Car」キーボード主体の小曲。
その後ジェフがソロやasiaでも良く使っているので、お気に入りの曲なんだろう。

「Does It Really Happen?」グルーブ抜群のベースや、ギターとキーボードのユニゾンなど、各パートが個性を出しながらも、バランスがよく破綻していない。

「Into The Lens」力の入った曲だが、いまいち盛り上がりに欠ける。
変拍子も多用したり、いろんな展開を示してはいるが、ちょっと消化不良。

「Run Through The Light」ちょっと一休みの感じの印層の薄い作品。
が、じっくり聞くと結構面白いアレンジだったり、目立たないところでキーボードやベースが細かいおかず入れていたり、実験的な作品だったのかもしれない。

「Tempus Fugit」リズムブレーク、ベースのメインリフ、ギターのおかず…イントロの2分だけでも評価に値する、かっこのよさ。
このベースラインはクリス自身お気に入りのようで、ライブのベースソロでは必ず入れてくる(そうでもしないとこのアルバムの曲は採用されないからという理由もあるだろうが)
このグルーブ感は彼らの歴史の中でもNo.1だろうし、ベースがメインで動く分、そのリズムの隙間をギターやキーボードのフレーズでつぐむところなど、「危機」や「リレイヤー」のころのような緊張感を感じる。
ある意味、ジョンがいたらこういう曲はできなかっただろうし、この「バグルスYES」メンバーの見事な化学融合だったのかもしれない。

カルト度 90%  何らかのきっかけでYESファンになった人でもなかなか手にしないでしょう。

Drama - YES CD/MP3


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