David Bowie「HEROS」
このアルバムを初めて聴いたのは、FMラジオ。
この頃はまだ、売れるアーチストの新譜がでたら、LPまるまる放送する番組がいくつもあった。
その中でもタイトル曲の「HEROS」は最高にかっこよく、雑誌で見ていたアルバムジャケットに映っている丹精だが不思議な魅力を持った男に惹かれていった。
(光の加減なのか、左右で瞳孔の開く具合が違う表情ってのは見たことがなかったから…)
ただこのときは音を手元に残せず、その後このアルバムの中の数曲だけをエアチェックして、テープで何度も聞いていた。
しばらくしてLPを買ったときに2回目の衝撃を受けた。「HEROS」以外にもいい曲がいっぱいある。
でも、このアルバムは「HEROS」のためのアルバムだった。
そして、「Ziggy Stardust」を聴き、「Low」のことも知ったあと、CDを揃えていく過程で再び聴いた時…ボウイという長い時代走り続けるロックスターの歴史の中の一枚として、やはり重要なアルバムだったと…
「BEAUTY AND THE BEAST」ピアノのイントロ、ドラム・ベースがフォードイン、シンセ・ギターがおかずを入れる。
そしてハミングからボウイが登場する見事な幕開け。
とてもPOPな曲だが、ボウイのボーカルの上手さでとても深みのある曲に仕上がってる。
よくよく聞くとかなりファンキーだし、そう考えると「Let's Dance」の路線も早々奇抜ではないなと…(プロデューサーの違いでイメージは大違いになるということやね)
「JOE THE LION」ギターが頑張ってるが、これもロバートフリップなんだろうか?(「"HEROES"」に参加してるのは知っているが)
きらびやかな面のボウイを見せている作品。
「"HEROES"」今にして思えば、そんなに奇抜なこともしていない単純なバッキング。
シンプルなドラム、控えめのベース、リードシンセのシンプルな音、それほど派手でないギター…
しかし、ひたすらにボウイのボーカルが素敵なのだ。
ずっと、渋く抑え目に語りかけるように言葉をつむいでいく…それが後半、オクターブ上げてシャウトする。
「俺達は英雄になるんだ、いつの日か」
もし、先に「Ziggy Stardust 」をしっていたら評価は違ったかもしれない。
あるいは、大学くらいに出会っていても評価は違っただろう。
しかし、雑誌やFMくらいしか情報源のなかった中坊にはこれほどかっこいいものはなかった。
「SONS OF THE SILENT AGE」前曲の余韻の中、ちょっとダークな雰囲気で始まる。
この曲の方がシャウトしている感じだが、音圧の具合なのか、イメージの具合なのか、前曲よりかなり抑えた印象がある。
「BLACKOUT」不思議な曲だ。
バッキングは淡々と(ちょっとファンキー気味)演奏を続ける前で、ボウイのボーカルがはじけまくる。
ヨーロッパ的なダークさと、アメリカンなテイストが混沌としている感じか。
「V-2 SCHNEIDER」LPではここからB面。
一瞬、「Low」のB面のような深い音が出てきそうな静寂があるが、ここではクラフトワークを思わせる「機械の音を楽器で表現」しているような妙に明るい音使いになっていく。
後半、ボコーダーでタイトルを連呼するあたりもクラフトワークだ。
(このころはドイツで生活してるからかなり影響うけてるんだろう)
「ENSE OF DOUBT」一転して、ピアノの低音から始まるリズムレスの流れ。
シンセやローズが出入りし、様々なSEも。
「Low」では一面使った退廃的雰囲気のインストを、このアルバムではここからの3曲にまとめたのか。
「MOSS GARDEN」メドレーのように前曲から引き続いて始まる。
琴の音(でも、シンセだろう)でメロディをかなで、少し明るい雰囲気になったが、低音でシンセがなり続けかなり奥行きの深い曲になっている。
このセンスはイーノに影響されているだろう。
前曲で不安に陥れていた気持ちを、ゆっくりと引き上げて言ってもらえる。
うーん、あらためて聴いてみて、今でも立派に通用する…というか、癒し系の音楽が流行っている現代こそ評価されるべき曲かもしれない。
「NEUKÖLN」こちらもメドレーのように、前曲と境目無しに始まる。
前曲で引き上げられた気持ちを、再び混沌へ突き落とすようなメロディ。
メインはオーボエのような木管の音か(これも多分シンセ)
琴のように弾かれてMAXから徐々に衰退していく音と違い、木管系は最初の音(アタック)から徐々にMAXになって、また徐々に消えていくのが音の基本。
その揺らぎが、不安な気持ちを引き起こすんだろう。
そして、唐突に曲は終わる。
「HE SECRET LIFE OF ARABIA」インストの3曲で夢見心地になっているところへ突然ドラムのリズムが刻まれる。
リズムレスでたゆたっていたところから引き戻されるのだが、そこは一筋縄でいかないボウイ様、東ヨーロッパの雰囲気からの着地点がアラビアンだという…
このアラビアンな旋律に、またボウイの声がよくはまっている。
定番度 85% 今でも充分通用するPOPさがある。
HEROS - David Bowie LP/CD/MP3
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