David Bowie「Low」
David Bowieを知ったのは、この次のアルバム「Heros」から。
その後、このアルバムを買って聞いたが、当初はA面中心で、B面のインストはつまらないと思っていた。(しかも、A面もそんなに気に入らなかったんで、あまり針を落とすことはなかった)
80年代になって、ボウイが「Let's Dance」路線を歩み始めると、Duran DuranやABCなどと同じ「きらびやかで派手なブリティッシュ・インベンション」の先輩格として見ていたから、あまり昔のアルバムを振り返らなかった。
時代が90年代になると、私はリアルタイムのものより70年代のものをCDで買いなおす作業に入った。
このアルバムもそうやって買ったのだが、あらためてこの作品を聞いてビックリ。
正確にはLP時代のB面の曲たちにだ。
10年以上前にこんな世界を作っていたとは、見えていなかった。
ボウイはよく「時代を先取りしている」と言われるが、数十年経ってあらためて聞かないと、その良さはわからないのかもしれない。
A面の変にエレクトリック・ポップしてるのはすでに終わっているが、B面分のインストナンバーは今聞いても、その深みに新棚発見がある。
「Speed Of Life」オープニングのインストナンバー。
それぞれの音は結構チープな感じで、スネアの音も変にエレクトリックしてて力が抜ける(笑)
しかし、このモノトーンのギター・メロディがだんだん耳になじんでくるから不思議だ。
「ジギー」で作り上げた、スターマンのイメージを揺り起こそうと言うのか…
「Breaking Glass」一転して、ドラムの音が深くなり、ベースがうねりだす。
ファンキーなのりに絡む、軽くないボウイのボーカルが好対照。
「What In The World」これもノリはファンキー。
でもPOP…さらにそこにテクノっぽいSE…
新しい世界を試行錯誤している感じ(まだまだ浮いているが)
「Sound And Vision」今度はドラム・キーボードがテクノで、ギター・ベースがファンキー。
そしてボウイのボーカルが低音を聞かせて、このアルバムからのドイツ耽美派時代の予告的な趣。
「Always Crashing」SE的なキーボードが目立って、曲全体を散漫にしている。
バッキングがシンプルなら、「ジギー」時代のような名曲になれたかも知れない残念な作品。
でも、今回はそのイメチェンが狙いだっただろうから…いた仕方なしか。
「Be My Wife」ピアノの低音の使い方がパーカッシブで好き。
A面(LP時代)の中では一番ボウイらしいおしゃれな一曲。
「A New Career In A New Town」
「Warszawa」モノトーンを一定リズムで刻む、ベースとピアノ…
そこにシンセが絡んでは離れ絡んでは離れ…
この曲から始まる、B面全体を使ったインストナンバーはこうして始まる。
暗いトーンの街、冷たい雨、霧のように白い人々の息、屋根の下で肩を寄せ合って雨をしのぐ黒い服の親子連れ…その脇には一本だけ白い花を咲かせた小さな雑草。
そんなイメージが、私の聞いた感じです。
もうこの曲のためにこのアルバムがあり、この曲のために物足りないA面がありって感じで、ボウイの一時代が刻まれた。
ブライアン・イーノとの出会いの産物だ。
「Art Decade」前曲から引きずる深さはそのままに、少し明るい要素を加えたサウンド。
YMOやJAPANの作品に引き継がれるものじゃないだろうか。
逆に言えば、ボウイはやはり先駆者だったということ。
「Weeping Wall」ミニマルなバッキングに、エスニック要素が加わったシンセ。
今、あらためて聞いても遜色のない音の深み。
「Subterraneans」アルバムのエンディングを飾るアウトロ・ナンバー
今のポストロックと一緒に聞いてもOK。
暗い街並みの静かな夜明けという感じか。
CDにはこの後ボーナストラックが数曲入っている。
カルト度 80% 名盤だけど、一般にこれが好きな人は…やはりマニアックな人だろうな。
Low - David Bowie LP/CD/MP3
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