Pink Floyd「MEDDLE」
おそらく日本ではPink Floydの曲で一番有名であろう「One Of These Days」(邦題「吹けよ風、呼べよ嵐」)から始まるアルバム。「MEDDLE」とは「干渉」と翻訳された
名作「Atom Heart Mother」と「Dark Side Of The Moon」を結ぶアルバムでもある。
1曲目は「One Of These Days」ディレイを使った3連のベース、徐々に間隔が狭まり3連の音が重なりだし、スライドギターが絡まりだす…後半スライドギターがオーバーダブされる以外はシンプルなバンド構成であり、しかもインストだというのに、深い奥行きが感じられる。丁寧に音作りされている結果だろう。
70年代後半のプロレスブームのとき、各レスラーが自分のテーマ曲を使い出したがアブドーラ・ザ・ブッチャーがこの曲をテーマに入場していた。洋楽に興味を持つ前から、この曲だけは知っていたことになる。(他にはジグソーの「Sky High」とかクリエイションの「Spinning Tou Hold」など)
1曲目で頂上までテンションを高めておいて、一転、トラッドなアコースティックナンバー「Pillow Of Winds」、Zepのアコースティックナンバーのようなリフの「Fearless (interpolating You'll Never Walk Alone)」、ニックのドラムが優しく軽快で、これが1曲目と同じギタリストかと思わせるスライドギターを聞かせる「San Tropez」と続き、A面のクライマックスへ…
「Seamus」は実はなんの変哲もないブルースナンバー。ただ、発想が一味違うのがPink Floyd。コーラスに犬の遠吠えを使ってるのだ(笑)アメリカンブルースの偉人に「ハウリング・ウルフ」という鳴きのブルースギタリストがいるけど、こちらはほんものの「ハウリング」LPで聞いていたときは「変わってるな」程度だったけど。この曲での手法だと思うが、映画「Live At Pompeii」では犬をマイクの前で押さえつけて、鳴かせている様子が撮られている。
B面に移り、このアルバムのハイライト「Echoes」に入る。
ピアノの高音が虚空に響き、まるで水琴窟の水音のように一定に響く。やがて、水面のあちこちに波紋が広がるように音が増えていくと、まるで和風の琴のように聞こえ出す。遠くからこだま(エコー)のようにギターがそこに重なりだし、ドラムとベースの音が加わりだす・・・デビッドとリックのユニゾンボーカルは、ひたすら優しくささやくように歌われ、しかしバッキングのサウンドは徐々に力強く、激しいリズムをバックにしたギターソロが続く…
同じようにLPの片面を使い、ドラマチックに展開していった前作の表題作「Atom Heart Mother」は、オーケストラとの見事な融合だったが、こちらはギター・キーボード・ベース・ドラムにボーカルというPink Floyd4人で作り上げたサウンドで23分を超える音世界を築いている。脱帽だ。
最初、水琴窟と表現した音を、宇宙で一定に響くビーコン音と捉える解釈もある。真空によりまったく無音の世界に響く人工的なビーコン音。そうすると、この音物語は宇宙の広がりを感じさせる。ある人がSF映画「2001年宇宙の旅」の後半クライマックスの映像にこの曲を重ねたものを見た。はかったようにエンドタイトルまでの時間とこの曲がピッタリ一致している。意図したのかしないのかはわからないし、私にはどうでもいいのだが(笑)ひとつの解釈としては面白い。もっとも、そんなひとつのイメージを与えられても、それに固定されないだけのイメージの広がりを見せてくれる壮大な曲だ。
しかし、Pink Floydは演奏が上手いわけじゃないのに(失礼)これだけの世界が作れるのだから、すごいバンドだ。
先に話題にした映画「Live At Pompeii」にはこの曲の演奏風景が収められている。
定番度90% 「狂気」が気に入ったら、その原点を探るためにこのアルバムを
Meddle - Pink Floyd LP/CD/MP3
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