May 18, 2025

映画「サンダーボルツ*」 序章1

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マーベル作品を観るようになったのはいつからだろう…

息子がはまっていたのは知っていたので、話題を合わせるために観たのが1作目の「アベンジャーズ」だったか
入院してて、暇つぶしに毎晩映画見てた中の一つ
ディズニーの配信が始まって、気軽に観れるようになったころだからかなり前
で、続編を観ようと「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」を観たら、なんか敵役の設定がえらい変わってて、味方の組織もなんか崩壊してたし、でちんぷんかんぷん
ネットで沿革を知ろうとすると、その2作の間にそれぞれのキャラの単独作がうじゃうじゃあって、それがつながっているという…

それならば、と一念発起し、ネットで調べたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を1作目「アイアンマン」から見始めることに
で、今更ながらの感想を息子とシェアしだすと、その親子の会話がこれまた楽しい

おとんはStarWarsを熱く語って、エピソード7以降は息子と時間を共にして、息子はマーベルをおとんに仕込んでいくという構図

そのころ、コロナ渦もあって、映画の新作はなかなか上映されず、その分配信ドラマが増えてきたが、マーベル作品は全部追いかけるようになった
また、映画館上映作品も、半年も待たずに配信されることがあるので、気軽に何度も観れるようになった

ということで、まずはヒーロー集合作品「アベンジャーズ」までの通称「第1フェーズ」作品を制覇
『アイアンマン』(2008)
『インクレディブル・ハルク』(2008)
『アイアンマン2』(2010)
『マイティ・ソー』(2011)
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)
『アベンジャーズ』(2012)

このころはそれぞれ単独のヒーローものなのだが、ポストクレジットと呼ばれるエンドタイトル終了後のおまけ画像で別作品とのつながりがひっそりと生まれるという手法がとられる
これら単独作を見てから「アベンジャーズ」を観なおすと、面白みが増した

古くからの映画好きからすると、それらとは別物でドラマ性は薄く、かなりご都合主義ではあるが、そのへんは置いといて子どものころ楽しんだ仮面ライダーやウルトラマンと同じような、スクリーンサイズで暴れるヒーローものと割り切れば楽しい…とはまりだした

ただ、ここからは苦難の道が待っていた

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March 24, 2025

映画「名もなき者」(A COMPLETE UNKNOWN)

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「名もなき者」(A COMPLETE UNKNOWN)を観てきました
最近「ROCKな映画」をよく見に行きますが、ドキュメントものが多く、ほとんどミニシアターでしたが、この作品は久々にシネコンでの上映作品です
(GET BACKはシネコンだったな)

シネコン上映ってことは話題作ってことでもあり、音楽好きに限らず鑑賞する人がいるだろうし、ボブ・ディランを名前と有名曲しか知らないような方(一緒に行ったうちの連れ合いがそう)も、「映画作品」として観たことでしょう
もちろん、私の周りのディラン好きやROCK好きの方もいっぱい観に行ってました

主演のティモシー・シャラメ君は「絶世の美男子」と言われるだけのことがあり、端正な顔立ちですが、演技も大したもので今作では少し薄汚れた感じの若者をうまく演じてました
また、ディランをしっかり研究したであろう、しぐさやしゃべり方、声のくぐもり方など素晴らしく、ウッディ・ガスリーと最初に出会ったときのセリフ一言で「あぁジマーマン(ディランの本名)だ」感心してから、ラストまでディランにしか見えなかった
さらにはギターの演奏や歌も、努力して身に着けて、違和感なく披露してくれました

「FREEWHEELIN」のジャケットでも有名なシルヴィとの出会いと別れ
ジョーン・バエズとのエピソード
様々なアーチストとの出会い
それらによって変化していくディランの心情が響いてきます
実際にはどの程度だったかわかりませんが、映画の物語として成立するような脚色はあるでしょう
だからこそ映画として見入ることができます(コアなファンには不満があるようですが)

秀逸なのは、差別主義やキューバ危機など、当時の世相をニュースで盛り込むことで、そこにカウンターさせるディランの詩の世界が深く意味を持ちます
私がディランを知り、聞き始めたころはもうそれらの時代は変わった後で、「初期のディランの詩」とひとくくりでしたが、その時その時の歴史を味わえたのはうれしいことです

物語はクライマックスのフォークフェスに向かって進んでいきます
同じような映画の草分けである「ボヘミアン・ラプソディ」では感動的なライブで盛り上がりますが、この作品のライブはカオスなものとなります
伝説として知っていた「ユダ!(裏切者)」の罵声、「ライアー(お前はうそつきだ)」と返すディラン、を目にすることができるとは
(実際はこのフェスとは違うライブでのやり取りだったと思うけど)

そういう背景も含め、「Like A Rolling Stone」の演奏は鬼気迫るものがあり、思わず目頭が熱くなりました
なんども問いかける How does it feel

With no direction home
Like a complete unknown
と問いかける

ディランを追ったドキュメントも、この作品も、この一説からタイトルがとられているほど象徴的な問いかけ


あと、「ハルク」や「ファイトクラブ」でも楽しませてもらったエドワード・ノートンが渋くて素晴らしかった

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March 11, 2025

映画「ヒプノシス レコードジャケットの美学」

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洋楽のレコードで最初に買いだしたのはBEATLESだけど、次にはまったのがPinkFloyd
この音楽ブログでも第1回目が「LET IT BE」
第2回目が「狂気」だったりする
(20年以上前に始めてたのか…)

で、そんなPink Floydと関係が深いのが「ヒプノシス」で、それは個人ではなくてユニットだというのは知っていたし、実際彼らの作品は何枚も持っている
今回、映画になったので観に行った次第
関わりのあった方々のインタビューで構成されてるけど、Pink FloydメンバーもZeppelinメンバーも、ここ数年でさらにお歳を召されたようで…おじいちゃんばかりがしゃべってる映画
各アルバムジャケットのエピソードはどれも興味深く、音楽でこだわりを見せたアーチストに負けず劣らずのこだわりぶり
そのぶっ飛んだアイディアと、それを受け入れるぶっ飛んだアーチストが居たから出来上がった芸術のあれこれだと再認識
売り手のレコード会社だけが、常識的な判断で反対するけど、それを押し通せたからあれらの作品があるんだな
面白いのは、そんなヒプノシスに対し、ポール・マッカートニーだけは最初から自分でアイディア持ってて、それを実現させるために彼らの技術を利用したという…やはりあらゆる面で非凡な人だ
あと、「聖なる館」のジャケットは、最初は子どもらにスプレーペイントしてあの岩場に置いて撮影するつもりだったというエピソード
雨のために断念したため、モノクロでペイントなしで撮影して後で着色したという
もし、ペイントして撮影してたら、虐待で発禁、さらには彼らが大人になってから訴訟されてかもね
しかし、作品中のシド・バレットのエピソードにしろ、最期は仲たがいした二人のことを、今生きてるポーが語る場面にしろ、そこに「Wish You Were Here」が流れるのは反則過ぎ

LP世代にとっては、やはり30cm四方のサイズは魅力的で、ジャケットはほんとにアートだった
表と裏で物語になっていたり、中には見開きになっていたり(表面だけでは完成せず、広げて初めて作品になる)
有名な「狂気」のジャケットは、プリズムと虹の表から、虹が鼓動になっている内ジャケットを経て、表とは逆向きのプリズムが虹を白い光に収束させて表につながるという無限ループに仕上がっている
Zeppelinの実質ラストアルバム「In Through the Out Door」などはLPが茶封筒のような袋に封入されていて、どんな写真か見えない
で、実は登場人物の視点ごとに6種類あって、どれが当たるかわからないというものだった

レコードを買いに行くと、一枚一枚引き上げながらジャケットを見てほしいレコードを探すというものだったから、お目当てのもの以外のアルバムアートを見ることもできたし、なんなら「ジャケ買い」などという、アート先行の買い方もあったりした

今の子どもらは、そんなLPジャケットの魅力は伝わらないだろうし、CDなだけでも小さくて価値が下がるのに、いまやアプリに表示されるだけのアイコンとなってしまった

今回、封切りの初日(平日昼間)に行ったので、そこそこ観客はいたが、ほぼ私と同じ年代(笑)
ヒプノシスと聞いて惹かれるのは、アートだったレコードジャケットを知っている人だけかな

余談として、作中に流れたZeppelinのライブ映像は素晴らしかった
大スクリーンで観るジミーやロバートは圧巻だ
今、劇場で「永遠の詩」やったらすばらしいだろうな
できれば爆音上映+声援ありで

 

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October 27, 2024

マルホランド・ドライブ

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以前から観たかった映画が4Kレストアされて劇場上映されるというニュースを聞いて色めき立った
が、スケジュールと時間が合わず(遅い時間の上映ばかりだった)あきらめかけた時、京都での3館目でやっと時間を合わせることができた

マルホランド・ドライブ

奇才デビッド・リンチ監督による21世紀を代表する作品

リンチ監督は、最近配信で「ツインピークス」を観たこともあり、一筋縄ではいかないことを知っていた
なので、かなり構えて観に行ったのだが

主人公のナオミ・ワッツ演じるベティという娘がとにかくかわいい
ギャングに狙われるは、なぜか大金を持ってるは、記憶を失ってるは、家宅侵入してるは、という女性リタ(仮名)を、とにかくかいがいしく世話をする
ちょっと天然っぽいところも、都会知らずのところもあるけど

途中、脈絡なく現れるおどろおどろしいモノや、変な殺し屋のドジっぷりなど、
「リンチ監督ならぜったいなんかの伏線やろ」
「タランティーノみたいに、別の場所で同時進行してる話がどっかで集合するんか」
などと、余計な詮索をしながらも、とにかくベティの魅力に浸っていく

そう、まんまとリンチ監督の罠にはまっていく

ここまででもある程度のネタバレだが、本当のネタバレはこんなもんじゃないので、話はここまでにしておく

あんな素敵だったベティが…

お金払ってでももう一度劇場で観たかったが、行ったのが最終日だったから願いかなわず
せっかくレストアしたんだから、また最映してくれないかな

まだ演ってないミニシアターもいくつかあることだし…

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July 18, 2024

大画面で見ようパート4 「ベンハー」

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次に大画面で観たくなったのは「スペクタクル」
近年のCGによるものではない、実際に大セットを組み、人員を動員して表現したスペクタクル
でDVDラック眺めて選んだのが名作である本作

キリスト生誕から受難までと同じ時代を主人公「ベン・ハー」の物語として描いた作品
ローマとユダヤの対比、迫害と復讐の物語
そこにキリストの軌跡を絡めたストーリー

町並みはおそらくセットなんだろうけど、街丸ごと作ったんじゃないかといくらいの壮大さ
そこに軍隊が行進してくるんだけど、今まで小さなテレビでは気づかなった、”延々”町の外まで続く隊列や、それを迎える何千人の群衆が大画面を占めるさまは圧巻
キリストが説教する丘の場面でも、人があふれている

これだけのエキストラと衣装などを用意して、ほんの数分のシーンに仕立て上げる贅沢さ
もちろん、本物だから感じる圧倒感がある

あと、今のタイムパフォーマンス的な考え方では考えられない、イントロダクションとして壁画のアップに音楽だけが響く5分ほどの始まり
途中休憩をはさむときも数分間、その壁画と音楽の時間
(そういえば2001年も数分間音楽だけのイントロがあった)
それらを含み、ほぼ4時間の映画

で、お目当ては後半の戦車戦(4頭の馬が引く2輪の馬車)
当時の(私が生まれるより前だ)機材でどう撮影したのか、圧倒的な迫力
本物のすばらしさはここにある

蛇足として、ジュリアーノ・ジェンマがその他大勢で映ってる
でも、そのオーラはほかのエキストラとは一味違っていてすぐ気づいた

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July 17, 2024

大画面で見ようパート3 「グランブルー」

111 宇宙・大地と来たので、次は「海」を大画面で観ようと
でDVDラック眺めて選んだのがリュック・ベンソン監督の同作

フランス映画だけど、原題は「Le Grand Bleu」
アメリカ公開時に「THE BIG BLUE」とされ、DVDのタイトル画面はこちら
その後監督が再編集した長尺版が「Le Grand Bleu/VERSION LONGUE」で、持ってるDVDはこのバージョン
3時間弱の大作

ドラマとしては二人の潜水競技者の友情と一人の女性の物語
男二人・女一人・海といえば、「太陽がいっぱい」「冒険者」などフランス映画のお家芸

ロケーションはギリシャの海(最初はモノクロ)、アンデスの凍結湖、シシリーの海、再びギリシャの海と、どこも素晴らしい
真っ白な岩肌、空と海の藍
そして深海の暗さ
大画面ならではの迫力がある
(お色気シーンも大画面)

画面いっぱいにアップになるジャン・レノの色男ぶりったら半端ない

CGでは表せないものがここにはある

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July 16, 2024

大画面で見ようパート2 「未知との遭遇」

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自分の中でSF好きになった中坊の頃、それ以前に「JAWS」を観て映画監督に興味を持ったころでもある(部屋にはスピルバーグのポスターを張っていた)
なので、映画雑誌で観ていて期待値MAXで観に行った記憶がある
原題は「Close Encounters of the Third Kind」日本語にして「第三種接近遭遇」
なんか無茶苦茶ミステリアスでかっこいい
「We are not alone」というキャッチコピーも秀逸だった

で、今回久々に大画面テレビで鑑賞
一番驚いたのは夜空の星々のすばらしさ
先の「2001年宇宙の旅」も宇宙空間で星々はきれいだが、宇宙空間では星はまたばかない
地球上では空気があるからまばたく
広大なアメリカの片田舎の夜空はさぞ壮観なんだろう
ストーリー上大停電が起こるのでさらに素晴らしい夜空になる
蛇足だが、スピルバーグの描く夜空には必ずどこかに流れ星がある(今もそうかは知らないけれど)
それを探すのもファンのお楽しみ
あと、スピルバーグのお得意芸は、未知なるもの(サメやUFO)の姿がなかなか現されないこと
この映画でも最初に出てくる不思議な光は車のヘッドライトで、次の同じシチュエーションを描きながらそれが「異物」であるというワクワク感

で、共通の不思議体験をした人々が導かれて一大イベントになる
小型のUFOが乱舞して、音と光の洪水をショーの用に見せる
これでイベント終了と思わせて一度クールダウンさせてからの主役登場
ここが大画面で観たかった
同時期のスターウォーズも圧倒的な宇宙船を見せてくれたけど、こちらは地球上の自然物と対比させての圧倒感
日本人的に表すなら、富士山を背景にそれより大きなものが空を埋めるという感じか
もうこのシーンだけでおなか一杯

この映画で宇宙人をチラ見せしたスピルバーグは、やがて「E.T.」でがっつり宇宙人との遭遇を描く

思えば、SFがサイエンスフィクションからスペースファンタジーとなるきっかけの映画かもしれない

 

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July 09, 2024

大画面で見ようパート1 「2001年宇宙の旅」

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大画面テレビを買ったので、DVDコレクションから色々見ようかと
で、最初のチョイスはもちろんこの作品

公開時(1968年)はがきんちょだったんで観てませんが

リバイバルを映画館のスクリーンで観、レンタルビデオの時代にブラウン管テレビで観、DVD時代になったら購入し、液晶テレビを買ったら一番に観、大画面ノートPCのモニター企画に当選したときはキャンプ場に持ち出し夜空の下で観、「午前10時の映画祭」でやると聞けば再びスクリーンで観ようと出かけ…
再び大画面(といっても55インチ)がリビングに鎮座した記念に観なおしました
いやぁ、何度観ても興奮です

キューブリックの映像美は定評ありますが、やはりこの作品が一番
漆黒の闇とまっ白なディスカバリー号の対比
その後のSFの基本となるような白を基調にした宇宙船内部
のちの「シャイニング」につながる、不気味な無機質の通路
そして、機械音や推進音も排除した、全く無音の宇宙空間

ストーリーは理解することを拒否したもの
これを難解ととらえ、考察をかさねるという道もあるでしょうが、むしろ理解を超えたものがテーマなんで
アーサー・C・クラークの原作を読んで補完すれば違う楽しみ方もできるでしょうか

人知を超えた「オーバーロード」との邂逅は、解説されて理解するようなものでもないでしょうし
ドラマの好きな方には無理な作品かもしれませんね

ともあれ、この先品を知ったことでキューブリック作品としれば観ずにおれなくなりましたし、クラークの小説もすべて追っかけました

私の思想に大きな影響を与えた作品であることは間違いありません

 

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June 17, 2024

Pink Floyd 「The Dark Side Of The Moon」50周年記念イベント

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アルバム「狂気」発売50周年記念のイベントに行った
50年前、このアルバムをプロモーションするのにプラネタリウムを利用したことにちなんで、プラネタリウムで特別映像と友に大音量、5.1チャンネルの音響で聴くというもの
もちろん、メンバーのライブではなく(キーボードのリックは亡くなってるし)、あくまでアルバムを聴くというものだ

思えば、50年前に発売された作品に触れたのは中1だから48年前か
(その思い出から語りだすと長くなるので、以前の記事をご覧ください
http://manu.moe-nifty.com/manu/2004/11/dark_side_of_th.html
擦り切れるくらい聞いたレコード
CDになってからも、MP3プレーヤになってからも何十回何百回と聞いている
ギターでも何度でもコピーに挑んだ(当然デイビッドの味は出せない)

このイベントを知ってか予定表を眺めてすぐに申し込んだ
そして待ちに待った当日

会場は私と同じ年代がほとんどだった気がする
アナウンスによると、この日は完売だったそうだ

プラネタリウムの天井を見上げながら演奏を聴く
映像はこのために作られたもので、宇宙のイメージ
ピラミッドをモノリスのように扱い、地球から月、太陽系、銀河、外宇宙と旅を続ける
アポロから始まり、ボイジャー、ISSなどが取り入れられ、宇宙を旅する
まぁ、映像はあまり期待していなかった
アルバム自身の完成度が高くて、ビジュアルの助けはいらない
それに、「Dark Side Of The Moon」というタイトルとプログレということでスペーシーなイメージも持たれるが、それは比喩で、本当はインナースペース、つまり私の内面、内なる狂気を表しているアルバムだから
(そのあたりも以前の記事で取り上げている
http://manu.moe-nifty.com/manu/2009/07/pink-floydthe-d.html

と、前置きが長くなってしまった(それだけまだ興奮状態にある)
では、今回のイベントで何が素晴らしかったか
それは大音量で、360度の空間で、このアルバムの音を聴けたこと

「Speak to Me」
おなじみの心音から始まる
アルバムジャケットの内側にある、プリズムで虹色に分かれた線を心電図のように鼓動が走る映像がプラネタリウムの壁を360度めぐる
笑い声などのSEが全天に広がる

「Breathe」
デイブのアルペジオとスライドギターが大音量で響き渡る
映像もいろいろ工夫してたけど、2001年宇宙の旅イメージなだけで、まぁ予想通り

「On the Run」
ひたすら回り続けるシンセサウンドとSEに浸る
アルバムで聴いているときより長く感じた気がする(もちろん気のせいだ)
そして目覚ましのベルとビッグベンの鐘が鳴り響く

「Time〜Breathe (Reprise)」
前奏の乾いたタムの音が初めて聴くくらいに響いてくる
これが大音量の効果だと思う
こんなにかっこいいと思ったのは初めてだ
またギターのディレイもしっかり音が分離してて、立体的な音響の効果が出ていた
欲を言えばベースの低音も大事なんで、もっと体中に響くように設定してほしかった
ライブ用の音響じゃないから、仕方ないかもしれないけど…

「The Great Gig in the Sky」
前半で一番期待していたナンバー
ピアノとスキャットだけの曲だけど、大音量でこのスキャットに没入するだけで身体が浮遊していく
母性をかんじるんだろうか、ゴスペル的なスキャットに包まれる安心感
緊張感漂うアルバムの真ん中でこの曲は活きている

「Money」
唯一ISS内のコンピュータ画像が映像の軸になってる
曲の「俗世間」性を表現したかったんだろうけど、ちょっと興ざめ
そういう俗っぽさを眺めているのが2001年のHALを想起させるレンズっていうのも狙いすぎた感じがして…
でも、サックスソロとデイブのギターソロとは満喫できる
オーバーダビングされた複数のギターが360度の空間を埋める音響は素晴らしい

「Us and Them」
この曲はベースの低音が良く響いていた
他の楽器が抑え気味の恩恵か
非常にきれいな曲だけど、この歌詞に隠された「戦争批判」を知っているとまた違って聞こえる
ボーカルのディレイが立体的に響いて素晴らしかった

「Any Colour You Like」
全曲で気持ちを盛り上げてクライマックスへと導くブリッジとなるインスト曲
一種のクールダウン効果か
ここでも複数のギターが分離されて空間を埋め尽くす

「Brain Damage」
デイブのアルペジオとチョーキングのフィルインが浮遊する
その中を告白するような「狂った内面」
歌詞を知らなければ、きれいな曲だと思うだろう
ゴスペル的なコーラスと混じりながら叫ばれる「I'll see you on the dark side of the moon」
素晴らしい、完璧だ
そしてクライマックスへ

「Eclipse」
数かすの言葉の羅列
それらが
「太陽の元ですべては調和している」
なんてポジティブな言葉
しかしそれがその次の歌詞で吹き飛ぶ
「でも太陽は月に覆い隠される」
出来事としては、毎日照らしてくれる太陽が「日蝕」によって隠される時がある
そう太陽を隠すのは「月」だ
「月」とは私の「狂気」の象徴
ここまで来ると、映像や音響はどうでもよくなっていた
ただこの言葉に大音量で包まれるだけだ
当然のように涙がこぼれていた

そしてすべての映像が消え去り、暗闇の中を鼓動だけが響き渡る
会場すべての人が余韻に包まれていた

至福の時間だった

 

 

 

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June 02, 2024

映画『シド・バレット 独りぼっちの狂気』

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以前、エリッククラプトンのライブ映画を観に行ったミニシアターで予告編を観てからずっと気になってた映画「
シド・バレット 独りぼっちの狂気」が上映されたので観に行った
当日朝チケット予約をしたときは、平日のこともあって私一人独占状態
映画館につくとほかにも奇特な方がおられたようで、7・8名の観客が
(まぁ、私と同じ年代な感じ)

映画が始まり、俳優を使ったイメージパートをブリッジに、彼の生い立ちに合わせて関係者の証言が続いていく
気になったのは、そのイメージパート
BGMが「Shine on you crazy diamond」なのだ
もちろん、PinkFloydから入った私はこの曲の意味は知っている
しかし、Pink Floydに頼りすぎだという偏向イメージをもたせるものだ
思えば映画の和訳タイトルも「一人ぼっちの狂気」としている
原題は「Have You Got It Yet?」であり、狂気のかけらも何もない

そう「狂気」はPink Floydの代名詞だ
(まぁ、アルバム「狂気」も原題のかなり無理やりな意訳になっているが)
しかし「Shine on」も「狂気」も音楽としてはシドは関わっていない
シドの半生を探るのには最初期のPink Floydは良いとしても、ヒット作にあやかるのは…

と、相変わらずのへそ曲がりぶりを感じながら映画を観ていく
学生時代のエピソードから、バンド初期の創作活動
ライブの様子などを貴重な動画で観ていると、彼の才能にしびれてくる
こんな感覚に浸れるならドラッグ文化も捨てたものじゃないとさえ感じる
(60年代に英国で育っていたら私も染まっていたかもしれないとさえ思える)

絶頂期から混迷期へ
そして破綻
やはりドラッグはダメだ、触れないでよかったと思える

残されたメンバーや知人たちが振り返る姿
もちろん、今になっての美化はあるだろうが、なんとかソロアルバムを完成させようとする仲間たちの姿や、ヒット作のあとにあえて自己の内面をつらつらとつづるロジャー。ウォータースの姿
ここでやっと「Shine on you crazy diamond」が活きてくる

ある意味、このインタビューまでこの曲を封印していたら、さらに劇的にこの曲が作られた「その時」を衝撃的に味わえたかもしれない
すでにそのストーリーは様々な文献で知っていたにせよ、シドの歴史をなぞったうえでのロジャーの想いに触れることは涙なしに居られない

シドが居たからこそのPink Floydだということを改めて感じる

それにしても、パパラッチはなんて残酷なんだ

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